ポンペイに眠っていた「思い出の品」。噴火で埋もれた収納棚から幼少期のお守りや化粧道具を発見

ポンペイの住宅から、約2000年前の木製収納棚の痕跡が見つかった。中には幼少期のお守り24点以上や化粧道具、青銅貨38枚が残されていた。噴火で取り残された品々が、かつての住人の暮らしや、大切にしていた思い出を浮かび上がらせる。

「コルネリウス・マクシムスの家」で発見された、幼少期のお守り「クレプンディア」の一群に含まれる、翼のある靴をかたどった小さな装飾品。Photo: Facebook/Pompeii Parco Archeologico

ポンペイ考古学公園の発掘調査で、紀元79年のヴェスヴィオ山噴火によって埋もれた住宅から、木製収納棚の痕跡が見つかった。中には幼少期のお守りや化粧道具、青銅貨などが収められており、当時の暮らしの一端が明らかになった。Arkeonewsが報じた。

発見されたのは、ポンペイでも特ににぎわっていたアッボンダンツァ通りに面する、通称「コルネリウス・マクシムスの家」だ。棚自体は完全な形では残っていないものの、発掘時の痕跡から、元の姿や収納されていた品々を復元できるという。

出土品のなかでも特に注目されるのが、首飾りを構成していたとみられる、少なくとも24点の小さな装飾品だ。ファイアンス(施釉した石英質素材)、骨、ガラスペースト、水晶で作られたペンダントには、ベスやメルクリウスといった神々のほか、人間の手足、松かさ、ブドウの房などがかたどられていた。

考古学者たちは、これらを古代ローマで子どもに身につけさせていた装飾品「クレプンディア(crepundia)」とみている。名称は「音を立てる」を意味するラテン語に由来する。子どもを守るお守りであるとともに、動くたびに装飾品が触れ合って鳴る音で、大人が子どもの動きを把握する役割も果たしたと考えられる。

木製収納棚の痕跡から発見された、幼少期のお守り。Photo: Facebook/Pompeii Parco Archeologico
木製収納棚の痕跡から見つかった硬貨。Photo: Facebook/Pompeii Parco Archeologico
「コルネリウス・マクシムスの家」内部の様子。Photo: Facebook/Pompeii Parco Archeologico

同公園によると、大人になっても、こうした品を幼少期の思い出として保管する人がいたという。小箱に収めたり、今回のように布袋に入れて収納棚にしまったりしていた背景には、当時の人々の移動の多さもあったとみられる。古代ローマ社会では、奴隷から裕福な商人まで、あらゆる階層の人々が広い地域を行き来し、親や親族、幼少期を過ごした場所から遠く離れて暮らすことも珍しくなかった。

そのほか棚の中からは、毛抜きや化粧用の顔料を溶き混ぜる道具、香油などを入れるガラス容器、香炉、青銅製のランプも見つかった。その傍らには、商取引に使われた可能性のある鉛製の分銅が、小さな木箱に収められていた。これらの品々からは、女性の暮らしや商いの営みがうかがえるものの、棚の持ち主や、全ての品を同じ人物が使っていたかどうかは分かっていない。

さらに、棚には38枚の青銅貨も保管されていた。硬貨が入っていたのは、「キステッラ(cistella)」と呼ばれる、植物素材を編んだ小さな容器だ。発掘時に回収された容器の残片についても分析が行われている。硬貨をはじめとする品々が残されていたことから、持ち主には、金銭的にも思い出としても大切な所持品を回収する余裕がなかったと考えられる。

住人たちが噴火の際に街にいたのであれば、避難を試みたのだろう。逃げ延びたとしても、持ち物を掘り出すために戻ることはなかったとみられる。近年の発掘では、噴火後に所持品を回収しようとした人々の痕跡も確認されているが、この家の住人たちが同じ行動を取った形跡はない。あるいは、逃げ切れずに命を落とした可能性もあり、その運命は分かっていない。

ポンペイ考古学公園の園長ガブリエル・ツフトリーゲルは、今回の発見について次のように述べている。

「ポンペイは、優れた美術作品があるだけの場所ではありません。ごくありふれた品々からも、過去に生きた人々の姿が浮かび上がる場所なのです。今回の発見の価値は、日々の習慣、仕事、思い出といった、ある人生のさまざまな痕跡を結びつけて読み解けることにあります。この家に誰が住んでいたのかを確実に突き止めることはできませんが、こうした断片は、その人の日常に私たちを近づけてくれます」

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