ポンペイの食堂跡からエジプト由来の陶器を発見。古代の文化交流を明かす重要な手がかりに

ポンペイの食堂跡から、約2000年前に作られた陶器が発見された。エジプト・アレクサンドリアで作られたとされるこの器が庶民が利用する食堂で見つかったことで、当時の文化交流の実態が浮かび上がる。

エジプト製の陶器が発見されたポンペイの食堂跡。Photo: Courtesy Archeological Park of Pompeii
エジプト製の陶器が発見されたポンペイの食堂跡。Photo: Courtesy Archeological Park of Pompeii

古代ローマ時代に使われていた食堂跡の保存修復作業中に、エジプト由来とみられる陶器が発見された。およそ2000年前のこの陶器の発見は、古代エジプト文化が当時のローマ社会にどういった影響を与えていたかを探る重要な手掛かりとなっている。

今回発見された陶器は「シトゥラ」と呼ばれるバケツ型の容器で、ポンペイのレジオV地区にあるテルモポリウムの保存修復中に発掘された。テルモポリウムは現代のファストフード店のような存在で、住民が温かい食事や飲み物を購入し、店外で飲食する場所だった。ポンペイではこれまで80軒以上のテルモポリウムが見つかっている。

2020年に発掘と修復が完了したこのテルモポリウムでは、店内の壁に食用動物や鳥の絵が描かれており、当時の食文化をうかがわせる。店内にはL字型のカウンターが設けられ、石造りの天板には料理を提供するための壺が埋め込まれていた。奥には食材や飲み物を保存する容器が並ぶキッチンがあり、2階は店主の居住空間として使われていた。さらに、店の入口付近にはトイレも設けられていた。

エジプト様式の狩猟場面のレリーフで装飾されたこのファイアンスの壺は、ローマ支配下のエジプト・アレクサンドリアで生産された高級品と考えられている。それが庶民の利用するテルモポリウムで発見された理由は明らかではないが、家庭祭壇として用いられた可能性も指摘されている。この発見は、エジプトの文化や宗教的習慣がギリシャやローマの上層階級だけでなく、一般市民にも広く浸透していたことを示唆している。(翻訳:編集部)

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