米国立公園局がウェブサイトから「トランスジェンダー」表記を削除。活動家らは「歴史の抹消」と猛抗議
トランプ大統領令に従い、アメリカ国立公園局（NPS）は2月13日に「ストーンウォール国定記念碑」のウェブサイトから「トランスジェンダー」と「クィア」の表記を全て削除し、「LGBTQ+」を「LGB」または「LGBQ」に置き換えた。これに対し、活動家や歴史家たちは「意図的な疎外」と強く非難している。
アメリカ連邦政府が保護する公共の土地を管理する政府機関、アメリカ国立公園局（NPS）は公式ウェブサイトの「ストーンウォール国定記念碑」のページから、1969年6月28日未明にニューヨークで起こったストーンウォールの反乱に関与したトランスジェンダーの人々に関する記述をすべて削除した。
ストーンウォールの反乱は、ニューヨーク市マンハッタンのグリニッジ・ヴィレッジにあるゲイバー「ストーンウォール・イン」で起こった一連の抗議活動を指す。当時、LGBTQ+の人々に対する差別が横行し、警察によるゲイバーの取り締まりが強化される中、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあるゲイバー「ストーンウォール・イン」にも警察による強制捜査が入った。しかし、店内にいたクィアやトランスの活動家を含む客たちはこれに対抗し、数日間にわたる抗議運動へと発展。この出来事は、現代のLGBTQ+権利運動の象徴的な転換点とされ、毎年6月に行われる「プライド月間」の起源にもなった。さらにその後、ストーンウォールの反乱が起きた地域は、オバマ政権時代の2016年に国定文化遺産保護地域に指定された。
NPSはストーンウォール国定記念碑のページで用いてきた「LGBTQ+」という表記を「LGB」または「LGBQ」に置き換え、T=Transgenderを排除したと同時に、「クィア（queer）」という言葉も削除。修正後のページには、次のように記載されている。
「1960年代以前は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル（LGB）として公然と生きることのほぼすべては違法とされていた。しかし、ストーンウォール・インでの出来事が、LGB市民権運動に新たな勢いをもたらしたのです」
この変更に対し、活動家や歴史家は「歴史の抹消を試みるもの」だと強く非難している。ストーンウォール・インとその支援団体「ストーンウォール・イン・ギブズ・バック・イニシアチブ」は2月13日に共同声明を発表し、次のように述べた。
「『トランスジェンダー』という言葉を削除する決定は、私たちのコミュニティが勝ち取ってきた多くの成果を切り開いた人々を意図的に疎外する試みだ」
トランスジェンダー活動家のマーシャ・P・ジョンソンとシルヴィア・リベラは、ストーンウォールの反乱の重要人物だった。二人はその後、ホームレスのトランスジェンダーの若者を支援する団体「ストリート・トランスヴェスタイト・アクション・レボリューショナリーズ（STAR）」を共同設立。リベラはその後も、LGBTQ+運動によって得られた法的保護にトランスジェンダーの人々が含まれるよう尽力した。
今回のNPSの対応は、トランプ政権の性自認に関する方針と一致している。この方針では、性自認に関する公的な言葉を再定義し、特定の表現を排除するとしており、過去数週間の間に、政権は性自認の法的承認を制限し、トランスジェンダーのアスリートが女子競技に参加することを禁止する大統領令を発令した。また2月初めには、ピート・ヘグセット国防長官が発表した新たな基準により、現役のトランスジェンダー兵士は、軍医から一部のジェンダー肯定医療（トランスジェンダーの若者を対象とした、ホルモン投与などの医療ケア）を受けることができないと規定された。
