モディリアーニ、ミロらの学び舎がなくなる!? 新オーナーが再開発で名門美術学校に立ち退きを要求
アメデオ・モディリアーニ、ジョアン・ミロ、アルベルト・ジャコメッティ、ルイーズ・ブルジョワらが学んだパリ6区の名門美術学校、アカデミー・ド・ラ・グランド・ショミエールが、現在創業地からの立ち退きを迫られている。

パリ6区、モンパルナス地区にある1904年開校の名門美術学校、アカデミー・ド・ラ・グランド・ショミエールが現在立ち退きを迫られているとアートネットが伝えた。
グランド・ショミエールはスイス出身のマルタ・ステットラーとロシア出身のアリス・ダネンベルクという2人の女性画家によって設立された私立の美術学校。科目と期間が自由に選べ、同じくパリにある私立の美術学校、アカデミー・ジュリアンなどと比べて低価格で学ぶことができた。その上にフェルナン・レジェ、ウォルター・シッカートといった著名な芸術家が教師を務めるなど教育水準は高く、同校で学んだ生徒にはバルテュス、ルイーズ・ブルジョワ、タマラ・ド・レンピッカ、レメディオス・バロ、ジョアン・ミロ、アルベルト・ジャコメッティ、メレット・オッペンハイム、ジョン・クラクストン、アレクサンダー・カルダー、イサム・ノグチ、アメデオ・モディリアーニ、岡本太郎など、枚挙に暇がないほどの有名人が名を連ねている。
その後同校は1957年にインテリアデザイン専門の姉妹校シャルパンティエ・アカデミーを開校。現在シャルパンティエには年間100人、グランド・ショミエールには2時間のモデルデッサン授業を年間約8000人が受講するなど、今なお人気校であり続けている。

だが、ル・モンドの報道によると、同校は現在の地主であるアレクサンドル・ガレーズから7月31日までに立ち退くよう迫られている。ガレーズは同校の建物を自身の「学校、展示、オフィス、レストラン、小売りの用途を組み合わせた」商業・文化プロジェクトに転換する計画を立てており、改装工事のために建築家のフランクリン・アジを雇ったという。
この事態に、有志が嘆願書を作成した。嘆願書では、校舎は歴史的建造物として指定・登録されていないため、所有者が美術学校を高級ホテル、Airbnb用の住宅、または商業施設に転用する可能性があり、今は学校が失われる緊急事態であると訴えている。この嘆願書には6月6日10時現在で2万1000人を超える署名が集まっている。
また、地元の遺産保護団体SOSパリとモンツ14も共同でガレーズの計画に反対する公開書簡を発表。パリ市に対して歴史的アカデミーを守るための行動を取るよう呼びかけた。書簡では、「芸術とは単にオルセー美術館に展示される作品だけではありません。それは作品が生み出される生きた文脈でもあるのです」と述べ、グランド・ショミエールが守ってきた「古風な雰囲気」と「伝統を維持する教師たち」を称賛した。
同校の地主のアレクサンドル・ガレーズはスイスを拠点とするフランス人弁護士で、前の所有者が死去した後、2018年にオークションで敷地を取得。その後2021年に2校のリース更新をしないと発表した。
ガレーズの広報担当者はル・モンドの取材に対して、「ガレーズは、グランド・ショミエールの不動産が断片的に売却される危険にさらされていた時に購入し救いました。300万ユーロ(約5億円)を投じて行われる今回の改修・リノベーションのプロジェクトは歴史的建造物の専門家が参加しており、芸術の規則に従い、その場所の精神を尊重して行われています」と主張した。
このままだとグランド・ショミエールは100年以上の歴史を持つ校舎から去らねばならない。セルジュ・ザグダンスキ学長によると、グランド・ショミエールは近隣に、シャルパンティエ・アカデミーは15区と16区の境にある建物に移す計画を立てているという。