ハーバード大学に対する留学生締め出し措置が美術大学にも波及? 留学生に依存する美大経営に暗雲

アメリカの多くの美術大学は、全体の3〜5割を占めることもある留学生からの授業料が重要な収入源になっている。ハーバード大学への圧力から始まったトランプ政権の留学生排除政策が美術大学に波及すれば、大学経営が揺らぐ可能性がある。

シカゴ美術館附属美術大学の外観。同校は1200人以上の留学生を昨年度に受け入れている。Photo: Chicago Tribune News Service/Getty Images
シカゴ美術館附属美術大学の外観。同校は1200人以上の留学生を昨年度に受け入れている。Photo: Chicago Tribune News Service/Getty Images

ハーバード大学留学生受け入れを阻止しようと圧力をかけ続けていたトランプ政権は、このほど米国土安全保障省を通じて、留学生管理システムである学生・交流訪問者情報システム(SEVIS)への同校のアクセス許可を取り消したと発表した

この措置は、24時間以内に連邦裁判所によって差し止められた。しかし、トランプ政権はその後も中国人学生のビザを「積極的に」取り消す方針を示しており、一部の学生は他大学への転校を検討し始めている。今後は美術大学の学生からも同様の問い合わせが寄せられることが予想される。

こうした状況は、美術大学にとって深刻な懸念材料となる。というのも、アメリカの多くの美術大学や美術修士プログラムは、高い割合で留学生、特に中国人学生からの授業料に依存しているからだ。最近の統計によれば、外国人学生はスクール・オブ・ビジュアル・アーツで50%パーソンズ美術大学で35%、カリフォルニア芸術大学で30%、そしてシカゴ美術館附属美術大学とプラット・インスティテュートでそれぞれ29%を占めているという。

留学生の数は過去20年間で増加しており、この増加の背景には、中国やインドからの留学生数の伸びに加え、大学への公的資金削減という事情がある。留学生は多くの場合、連邦補助金の対象外であり、授業料を全額負担することから、大学にとっては重要な収入源となっているのだ。

例えば、2003〜2004年度にプラット・インスティテュートに在籍していた外国人学生は200人だった。2023〜2024年度になるとその数は2406人に増加している。下のグラフにも記しているように、この数はシカゴ美術館附属美術大学の留学生数のほぼ2倍に相当する。

サバンナ芸術工科大学、スクール・オブ・ビジュアル・アーツ、アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン、アカデミー・オブ・アート大学では外国人学生数はさらに多い。これらの大学は修士課程重視校(日本の専門職大学院に近しい概念)であり、専門性の高いプログラムが留学生を引きつけている。

国際教育協会の最新データによると、同年度にアメリカでファイン・アートや応用美術を学んだ4万195人の外国人学生の大部分は中国出身者(約42.1%)で、続いて韓国(約10.7%)、インド(約10.7%)、カナダ(約5.2%)となっている。(翻訳:編集部)

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