マンモスの牙製ブーメランが世界最古の可能性。従来説より2万年も前に狩猟技術を発達させていた?

ポーランド南部にあるオブワゾワ洞窟で見つかったマンモスの牙製ブーメランが、最新調査で4万年前のものであることが明らかになった。

最新調査で世界最古のものと判明したマンモスの牙製ブーメラン。Photo: Courtesy Talamo et al., 2025, PLOS One

1985年にポーランド南部のオブワゾワ洞窟で発見されたマンモスの牙製ブーメランをイタリア・ボローニャ大学のサハラ・タラモ教授率いる研究者たちが調査したところ、世界最古である4万年前に作られたものであることが判明した。6月25日付のPLOS ONE誌に研究成果が発表された。

アートネットが伝えるところによると、使い込まれ、摩耗が見られたブーメランは長さ71センチ。右利き用にデザインされており、握りやすくするために薄く削られ、印がつけられていた。 また、側面には装飾的な彫刻があり、赤い顔料が塗られていた形跡があった。さらに、投げたら戻ってくる通常のブーメランとは異なり、狩猟の際の精密な投擲を目的とした非帰還型の形状に設計されていた。

研究者たちが調査したところ、ブーメランは過去の修復作業で塗布された保存材によって汚染されており、放射性炭素年代測定は不可能だった。そこでチームは、ブーメランと同じ地層で発見された動物の骨とホモ・サピエンスの親指を放射性炭素年代測定したところ、後期旧石器時代にあたる4万2290年から3万9280年前のものであることが明らかになった。

ブーメランは、これまでオーストラリアの先住民が発祥と考えられてきたが、1973年に発見されたオーストラリア最古のものは約2万年前のもの。つまり、今回のブーメランはそれよりも2万年ほど古く、世界最古のものになる。これを受けて研究者たちは、ヨーロッパの初期の人類が従来考えられていたよりもはるかに早く、複雑な狩猟技術を独自に発達させたことを示していると論文で述べている。その一方で、研究者たちは慎重な姿勢だ。というのも、ほとんどのブーメランは、経年で土に還る木で作られていたと考えられるため、これが世界最古のものと結論を出すのは難しいからだ。

スロバキア国境近くに位置するオブワゾワ洞窟は、およそ30万年前から1万2000年前にかけてネアンデルタール人とホモ・サピエンスが居住していたと考えられており、過去35年にわたって発掘が続けられてきた。

今回、動物の骨と人間の親指の年代を調査した副産物として、当時は度々寒冷な気候に襲われており、トナカイ、馬、ムースオックスを含む多様な動物が人類により食されていたことが分かった。そのことから、初期の人類は環境の変動に直面したとしても柔軟に対応して回復し、この場所に住み続けていたことが示唆された。

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