ゴッホ美術館、存続の危機? 老朽化改修費4億円を政府に要請

ポスト印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホの傑作を多数所蔵するアムステルダムゴッホ美術館が、設備改修費の増資を政府に要請。実現しなければ閉館もあり得ると異例の警告を発した。

ゴッホ美術館に訪れた人々。Photo Sylvia Lederer/Xinhua News Agency via Getty Images
ゴッホ美術館を訪れた人々。Photo Sylvia Lederer/Xinhua News Agency via Getty Images

ポスト印象派を代表する画家、フィンセント・ファン・ゴッホの傑作を中心に所蔵するアムステルダムゴッホ美術館が財政難に直面している。急務となっている同館の改修工事に必要な政府からの増資がなければ、閉館もあり得ると異例の発表を8月27日に行った

この発表について同館は、1962年に政府がゴッホ財団と交わした約束が履行されていないためにやむを得なかったと説明している。同財団は美術館で展示されている作品の大半を所有しており、そのなかには《ジャガイモを食べる人々》(1885)をはじめとする象徴的な作品も含まれる。

1962年の合意は、ゴッホの子孫が数百点の作品を新設された財団に譲渡する代わりに、オランダ政府がゴッホ美術館の建設と維持管理の資金を継続提供することを定めたものだった。しかし美術館側は、政府の資金提供が十分でないと主張。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、この件について法的措置を講じたという。

同紙はまた、美術館は現在、政府から年間約1000万ドル(約14億7200万円)を受け取っているが、空調やエレベーターなどインフラの維持にはさらに約290万ドル(約4億2700万円)が必要と報じている。美術館は声明のなかで、建物は「劣悪な状態」にあるとして次のように説明している。

「技術設備の大部分は運用寿命に達し、時代遅れの設計や部品不足の問題が生じている。その結果、継続的な保守運用は不可能となり、システムの交換が不可欠だ」

こうした問題を解決するべく、同館は「Masterplan 2028」と題した総額1億2060万ドル(約177億円)のプロジェクトに着手。一般公開エリアを部分的に閉鎖しながら、老朽化した設備の更新や必要な保守作業を進める計画だ。しかし、工事期間中の収入減は避けられないため、その穴を埋める増資を政府に求めている。

安全面に関する懸念も浮上しており、ゴッホ美術館の館長を務めるエミリー・ゴルデンカーはニューヨーク・タイムズ紙に対し、「この状況が続けば、作品および来館者に被害が及ぶ恐れがある」と語った。

一方、オランダ文化省はニューヨーク・タイムズ紙の記事のなかで次のように回答している。

「ゴッホ美術館に対する補助金は、毎年インフレ率を考慮して金額を調整していますが、基本的に金額は固定されています。同館に支払われる金額は、我が国にある国立美術館と同じ手法に基づき算出されています。さらに、ゴッホ美術館は、他の美術館と比べて面積あたり最高水準の補助金を受けています」

この資金問題を受けて、ゴッホ財団は動揺を示し、次のような声明を発表した。

「当財団は、ゴッホ美術館の建物・設備に対する必要な資金をめぐる問題を受け、ゴッホ作品の公開継続について深く憂慮しています」(翻訳:編集部)

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