金融犯罪容疑の「BTS育ての親」の写真投稿で、韓国の博物館に批判殺到。「国家機関が容疑者を広報」

韓国ソウルにある国立中央博物館と芸能プロダクションのHYBEは10月2日、協力関係を結ぶ覚書を締結した。しかし、それを伝える同館のSNS投稿に批判が殺到。そこには、現在資本市場法違反の容疑がかけられているHYBE創設者のバン・シヒョク会長の姿があった。

2023年8月28日、カリフォルニア州サンタモニカで開催されたHYBEとゲフィン・レコードの共同企画によるグローバルガールグループに向けたオーディション参加者を発表したHYBEのバン・シヒョク会長。Photo: Vivien Killilea/Getty Images for HYBE x Geffen Records

韓国最大の博物館である国立中央博物館は10月2日、BTSやSEVENTEENなどが所属する芸能事務所、HYBEと韓国文化のブランド価値向上のために協力する内容を盛り込んだ覚書を締結した。今後博物館は、HYBE所属アーティストを活用したミュージアムグッズ「MU:DS(ミューズ)」を開発し、HYBE側は国立中央博物館のコレクションとコンテンツを広めるための広報協力を行う予定だ。

だが、ウィオン・ニュースが報じたところでは、この覚書締結を伝える同館のインスタグラム投稿が炎上し、同館は投稿を取り下げる事態に。そこには、ユ・ホンジュン館長とHYBE創設者のバン・シヒョク会長が並んで映っていた。

数々のヒット曲を生み出したことから「ヒットマン・バン」という異名を持つレコードプロデューサー、作詞作曲家のバン・シヒョクは、2005年にBig Hit Entertainment(現HYBE)を設立し、BTSを始めとする数々のK-POPアイドルグループを輩出した。かつてフォーブス・アジアはバンを韓国で最も裕福な50人の1人と報じ、ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、2021年7月時点の純資産は推定32億ドル(4730億円)だった。

SNSに投稿され、問題となった写真。国立中央博物館館長のユ・ホンジュン(写真左)とバン・シヒョク会長(写真右)。Photo: Courtesy HYBE
韓国・ソウルの国立中央博物館。Photo: Wikimedia Commons

投稿が炎上したのは、現在そのバンに資本市場法違反の疑いがかけられているからだ。2019年のHYBEの株式上場(IPO)時、彼は投資家に「IPOの計画はない」と虚偽の説明を行い、HYBE役員らが設立した私募ファンド(PEF)に持ち株を売却させ、約1900億ウォン(約190億円)の利益を得たというのだ。ソウル地方警察庁の金融犯罪捜査部は2025年9月にバンを出国禁止とし、取り調べを行っている。

そんな中での国立中央博物館によるバンの写真投稿に、「国家機関が犯罪容疑者を広報するのか」、「彼が犯罪捜査を受けている最中にこれを投稿するなんて……狂った行為だ」などという批判の声が相次いだ。

地元メディアのkbizoomによると、韓国の文化評論家チェ・イサクはこの件について、「チョコパイ1箱で有罪になる者もいれば、天文学的な金額の詐欺の疑いで捜査中なのに、国内最高峰の文化機関でVIP待遇を受ける者もいる。まさに金と権力が正義を決める国だ」との皮肉をXに投稿した。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい