1ドル紙幣の着想源! アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの肖像画がオークションへ

アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントンの肖像画が、来年1月23日にニューヨーククリスティーズで予定されているオークションに出品される。現在1ドル紙幣に使われている肖像の元になった「アテナエウムの肖像画」の系譜に連なる一作で、予想最高落札価格は約1億5600万円。

ギルバート・スチュアート《ジョージ・ワシントン(アテナエウムの肖像画)》(1804) Photo: Courtesy Christie's
ギルバート・スチュアート《ジョージ・ワシントン(アテナエウムの肖像画)》(1804) Photo: Courtesy Christie's

ニューヨーククリスティーズは来年1月、毎年恒例のアメリカーナウィーク中に行われるオークション「We the People: America at 250(われら人民:アメリカ建国250周年)」に、初代大統領ジョージ・ワシントンの肖像画を出品する。これは、第4代大統領ジェームズ・マディソンの依頼で1804年にギルバート・スチュアートが制作したもので、予想落札価格は50万ドルから100万ドル(最近の為替レートで約7800万〜1億5600万円、以下同)となっている。

スチュアートはアメリカ合衆国最初期の肖像画家として知られ、6人の大統領を含む約1000人の肖像画を制作した。作品はニューヨークのメトロポリタン美術館ワシントンD.C.ナショナル・ギャラリーおよびナショナル・ポートレート・ギャラリー、フィラデルフィア美術館、ボストン美術館などに収蔵されている。

数多いスチュアート作の肖像画で最も有名なのは、1796年に手がけたジョージ・ワシントンの未完の肖像だ。「アテナエウムの肖像画」と呼ばれるこの絵は、現在1ドル紙幣に使われている(ただしワシントンは反対向きにされている)。こちらはワシントン夫人のマーサが制作を依頼した油彩画で、ワシントンが亡くなる3年前の64歳の姿が描かれている。

ワシントン・ポスト紙の報道によると、アメリカ独立戦争時にヨーロッパに移住するなどして多額の借金を抱えていたスチュアートは、返済の足しにするためにアテナエウムの肖像画の複製を始めた。クリスティーズで競売にかけられる予定の作品は、現在残る70〜80点の複製のうちの1点で、前述のようにジェームズ・マディソン第4代大統領が依頼したもの。本作は、1851年にマディソン夫人のドリーから、鉄道・海運王ウィリアム・ヘンリー・アスピンウォールに売却された。アスピンウォールは、のちにメトロポリタン美術館の設立に貢献した人物だ。

それから数回所有者が変わった後、ニューヨーク州北部のクラークストン大学がこの絵の寄贈を受けている。同大学は最近、アメリカ建国250周年を機に作品を売却し、収益を教育面の充実に活用することを決定。ミシェル・ラーソン学長はワシントン・ポスト紙に、「永続的な所有が望める場所が見つかることと思います」と語った。

なお、オークションにおけるアテナエウムの肖像画タイプの最高落札額は、2015年に記録された106万ドル(約1億6540万円)。また、メトロポリタン美術館は昨年、スチュアートによるワシントンの肖像画を手放している。こちらは「ヴォーンの肖像画」と呼ばれるシリーズの1点で、昨年のクリスティーズ・アメリカーナウィーク時に280万ドル(約4億3700万円)で落札されている。(翻訳:石井佳子)

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