ヴェネチア市長、ビエンナーレのロシア館をけん制。「プロパガンダ展開の場合は閉鎖に踏み切る」
2026年ヴェネチア・ビエンナーレへのロシア館参加をめぐっては、同イベントの中立性を損なうとする批判など、さまざまな議論が交わされている。そんな中、ヴェネチア市長が、ロシアによるビエンナーレの政治利用に釘を刺す発言をして注目された。

ヴェネチア市のルイジ・ブルニャーロ市長が、5月に開幕するヴェネチア・ビエンナーレでロシア館がプロパガンダに利用されるようなことがあれば、その閉鎖も辞さないとの意思を表明した。
この発言は、3100万ユーロ(約57億円)の費用と16カ月の工期をかけて改修されたジャルディーニの中央パビリオン開館式で取材を行っていた報道陣に向けたもので、ANSA通信によれば、市長は「もしロシア政府がプロパガンダを行えば、我々が真っ先にパビリオンを閉鎖するだろう」と述べたという。
4年前のウクライナ侵攻以降初めて、ロシアがヴェネチア・ビエンナーレでナショナル・パビリオンに参加する決定を下したことで、アート界は二分されている。ビエンナーレのピエトランジェロ・ブッタフォーコ会長がロシアの参加を認める一方で、イタリアのアレッサンドロ・ジュリ文化相は参加に反対し、互いを非難し合う状態だ。その中でブルニャーロ市長は、自身とジュリ文化相の「ビジョンは異なる」として、ビエンナーレは対話と文化交流の場であり続けるべきだと強調し、こう語った。
「私は親ウクライナ派で、ヴェネチアと(ウクライナの)オデーサは姉妹都市の関係にあります。ロシアは侵略者ですが、私たちはロシア国民と戦争状態にあるわけではありませんし、芸術は開かれたものです」
ロシア館では、ロシアをはじめとする複数の国から50人以上の音楽家、詩人、哲学者を集め、民俗音楽やワールドミュージックを中心とした音楽プログラムの実施を予定している。プーチン大統領の文化特使であるミハイル・シュビトコイは3月3日、US版ARTnewsのメール取材に対し、キュレーション担当はアナスタシア・カルネエワだと回答。また、「ロシアはヴェネチア・ビエンナーレを離れたことは一度もありません」と述べ、こう続けた。
「私たちのパビリオンに何が展示されるかに関わらず、たとえばラテンアメリカの友人たちによる展覧会であれ、ビエンナーレ全体のための教育センターの設置であれ、パビリオンの物理的存在そのものが、ヴェネチアの文化空間におけるロシアの存在を意味するのです。したがって、私たちはどこにも行っていないので、『戻る』わけではありません。私たちは単に、現在の状況下で新たな創造的活動を模索しているだけなのです」
ビエンナーレ側は3月初めに発表した声明で、2022年のウクライナ侵攻を受けてモスクワに課されたすべての制裁措置は完全に遵守されていると主張。「いかなる規制にも違反していない」として、それを裏付ける資料をイタリア文化省に提出済みだと説明した。また、「文化や芸術に対するいかなる形の排除や検閲も」拒否すると表明したうえで、地政学的な緊張が続く中でもビエンナーレは「対話、開放性、そして芸術的自由の場」であり続けるべきだと付け加えている。
しかし、ロシアがビエンナーレに参加した場合、資金提供を取りやめる可能性があると欧州連合(EU)が表明して以来、賛否をめぐる緊張は一触即発の状態まで高まった。ジュリ文化相は、文化省代表としてビエンナーレの運営に携わっているタマラ・グレゴレッティにビエンナーレ理事会を辞任するよう求め、ロシア館の展示内容と制裁措置の遵守状況に関する詳細な文書の提出を要求している。(翻訳:石井佳子)
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