マルセル・デュシャンの誕生日をチェスでお祝い。MoMAでグランドマスターがアート界の50人と対戦

マルセル・デュシャン(1887〜1968)の生誕139年にあたる7月28日、ニューヨーク近代美術館(MoMA)でチェスの同時対局を開催。グランドマスターのスーザン・ポルガーが、アート界から集まった50人と一斉に対戦する。

1966年ニューヨーク。マックス・エルンストのデザインによるチェスの駒が置かれたチェス盤を前にくつろぐマルセル・デュシャン。Photo: Mark Kauffman/Getty Images

マルセル・デュシャンの139回目の誕生日にあたる7月28日、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で、チェスの同時対局が行われる。現在同館で開催中の大規模回顧展「Marcel Duchamp」の関連イベントとして企画された。Artsyが報じた。

MoMAによると、このイベントはデュシャンが生涯情熱を注いだチェスをたたえ、1973〜74年の同館初のデュシャン回顧展で行われた同時対局にオマージュを捧げるものだ。

今回対局に臨むのはハンガリー出身のグランドマスター(国際チェス連盟が授与する最高位の称号)、スーザン・ポルガーで、アート界から集まった50人を一度に相手にする。ポルガーは50面のチェス盤を順番に回って一手ずつ指した後、再び最初の盤へ戻る。これは「シマル」と呼ばれる、高度な集中力と記憶力を要する同時対局形式だ。

デュシャンは若い頃からチェスに魅了されていた。ニューヨーク移住後は、グリニッジ・ヴィレッジにあるマーシャル・チェス・クラブの常連となり、国際大会にも出場。1923年には芸術を捨て、チェスに専念すると公言したことで知られる。しかしその一方で、最後の大作《遺作(Étant donnés)》を人知れず数十年にわたって制作し続けていた。

1952年には、チェスについて次のような言葉を残している。

「全ての芸術家がチェスプレーヤーとは限らないが、全てのチェスプレーヤーは芸術家である」

この言葉に呼応するように、ポルガーもニューヨーク・タイムズのインタビューで、チェスに秘められた美しさについて次のように語った。

「ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画を見れば、それが美しいと分かります。チェスも同じです。ただし、その美しさを理解するには、より多くの知識が必要です。目の前にある美しさを味わうには、駒がどのように動くのかを知らなければなりません。それは、隠された美なのです」

MoMAで開催中の「Marcel Duchamp」は、北米では50年以上ぶりとなるデュシャンの大規模回顧展だ。約300点の作品を通して、20世紀美術の概念を根本から変えたデュシャンの足跡と影響をたどる。会場では、チェスもデュシャンの活動を貫く重要なテーマとして取り上げられている。彼にとってチェスは単なる娯楽ではなく、芸術実践と密接に結びついた知的探究だったことが浮かび上がる。

同時対局はMoMAのアグネス・ガンド・ガーデン・ロビーで正午から午後5時まで開催され、入館者は自由に観戦できる。

あわせて読みたい