カニエ・ウェストは「間違いなく天才」──アーサー・ジャファ、大規模個展を前にイェとの仕事を語る

カニエ・ウェストの楽曲を使用した名作映像「Love Is the Message, The Message Is Death」で知られ、2020年にはウェストのMVも手がけたアーサー・ジャファ。今月下旬に開幕する自身の個展を前に、数々の問題発言で批判を浴びてきたウェストとの仕事を振り返った。

アーサー・ジャファ Photo: Aurore Marcehal/Getty Images

ニューヨークニューミュージアムが、9月25日からアーティストで映像作家でもあるアーサー・ジャファの大規模個展を開催する。その開幕を前にジャファは、反ユダヤ主義的な言動や黒人奴隷化をめぐる発言で批判を浴びてきたイェ(Ye)ことカニエ・ウェストのミュージックビデオ(MV)を制作した自身の思いを語った。

ジャファは2020年に、ウェストの楽曲「Wash Us in the Blood」のMV制作で監督を務めた。この作品は2016年の名作「Love Is the Message, The Message Is Death」などと同じく、主にファウンドフッテージ(既存映像)をリズミカルに編集したもので構成され、ジャファ作品に繰り返し登場する題材──警察と対峙するアフリカ系アメリカ人、踊る人々、コンサートの記録映像、太陽フレア──が盛り込まれている。

ちなみに、US版ARTnewsは2025年春に公開した「The 100 Best Artworks of the 21st Century(21世紀のアート作品ベスト100)」ランキングで、「Love Is the Message, The Message Is Death」を首位に選出した。

「Wash Us in the Blood」制作にジャファが関わる2年前の2018年、ウェストは400年にもわたって奴隷制が存在したことについて「選択肢だったように聞こえる」と発言して物議を醸したり、ホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領(第1次政権時)と面会したりしていた。また、2022年にはSNSで「ユダヤ人に対してデスコン3(death con 3)に入る」(*1)と投稿。ポッドキャスト配信者のアレックス・ジョーンズに対しては、「ヒトラーには良い面もある」とも語っている。

*1 平時より高度な米軍の警戒レベルを示す「デフコン3(DEFCON 3)」を指したと見られる表現。

今年に入ってからウェストは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に全面広告を掲載し、自身の反ユダヤ主義的な発言について謝罪。「私はナチでも反ユダヤ主義者でもない。私はユダヤの人々を愛している」と記している。

そんな中、ニューヨーク・タイムズ紙で美術評論を担当するホランド・コッターがジャファの評伝を執筆した。ニューミュージアムの展覧会開幕を前に掲載された記事で、「Wash Us in the Blood」のMVについてコメントを求められたジャファは次のように語っている。

「イェのことは大好きだ。彼にはものすごく支えられてきた。人間としてもアーティストとしても深く尊敬しているし、間違いなく天才だ。それに、単にその発言を理由に黒人を切り捨てるようなことはしたくない。もし(トランプ)大統領やその取り巻き連中にも同じ基準を当てはめたら、と考えてみてほしい」

記事では、ニューミュージアムでの展覧会についても取り上げられている。「Arthur Jafa: I Am Tony(アーサー・ジャファ:アイ・アム・トニー)」と題されたこの個展はこれまでの作品群を概観するものとされているが、コッターによれば内容はまだ完全に固まっていないという。

コッターはジャファが今後さらに作品を追加する「可能性」があると指摘し、その候補として《More Real(モア・リアル)》と題された壁画レベルの新作抽象画や、マイケル・ジャクソンに焦点を当てた新作映像作品などを挙げている。これに関し、ニューミュージアムの新館長で、ジャファ展の共同キュレーターを務めるマッシミリアーノ・ジオーニはこう答えた。

「ジャファは常に、『最終形』という通念に異議を唱えてきました。彼は、この展覧会を確定しないものにしようと考えているのです」

ジャファにとってニューミュージアムの個展は、今年2つ目となる主要美術館での展覧会だ。現在、今年のヴェネチア・ビエンナーレ期間に合わせたリチャード・プリンスとの二人展がヴェネチアのプラダ財団で開催中で、高い評価を得ている。(翻訳:石井佳子)

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