アガサ・クリスティーは「玄人はだし」の写真家だった──その素顔に迫る特別展が大英図書館で開催

『オリエント急行殺人事件』ほか、「ミステリーの女王」として数々の名作を生み出したアガサ・クリスティーの没後50周年を記念する大規模展が、今秋ロンドンの大英図書館で開催される。展示会場では、薬学や考古学への関心のほか、写真愛好家としての知られざる素顔に触れることができる。

アガサ・クリスティーは「史上最も売れたフィクション作家」としてギネス世界記録に認定されている。Photo: Mondadori via Getty Images

10月30日、ロンドンの大英図書館で「Agatha Christie: A World of Mystery(アガサ・クリスティー:ミステリーの世界)」展が開幕する。主任キュレーターのルーシー・ローランドによると、クリスティーのキャリアや創作プロセスを幅広く紹介する同展は、「過去25年におけるイギリス最大規模」のものだという(2027年6月20日まで)。

展示品は、公私にわたる書簡やメモ、『そして誰もいなくなった』などの執筆に使われたレミントン社製タイプライターから10代の頃に執筆した初の短編小説『House of Beauty(ハウス・オブ・ビューティ)』のタイプ原稿、そして愛用していたコダックの写真機や写真アルバムまで100点以上にのぼる。しかも、アガサ・クリスティー・リミテッドとクリスティー・アーカイブ・トラストの協力で提供される初公開の品も多い。

これらは、没入型の演出が施された5つのセクション(イギリスの典型的なカントリーハウス、第1次世界大戦時にクリスティーが薬剤師助手として働いた調剤室、オリエント急行を模した列車、考古学の発掘現場、クリスティーの戯曲が上演されたウェストエンドの劇場)に展示される。そこで紐解かれるのは、エルキュール・ポアロやミス・マープルなどの個性的なキャラクターや名作ミステリー誕生の背景、そしてクリスティーの素顔や世界観だ。

このほか、著名な作家や放送関係者、熱心なファンへのインタビューを通じて、舞台や映画、テレビドラマシリーズとしても親しまれたクリスティーの作品が、ミステリー小説というジャンル全体に与えた影響が掘り下げられる。さらには、会場の随所にクリスティーのファンが謎解きを楽しめるようなヒントや、隠し要素が散りばめられているという。

今回の展覧会で特に興味深いのは、クリスティーが玄人はだしの写真愛好家だったことだ。20世紀初頭の暮らしぶりがわかる家族写真から、2人目の夫で考古学者のマックス・マローワンに同行して撮影した発掘現場の写真まで、彼女は10代の頃から70代まで長きにわたって写真を撮り続けている。ちなみに、考古学調査では発掘チームの公式フォトグラファーを務めるほどだった。

クリスティーの写真への関心を掘り起こした写真史の専門家でキュレーターのピッパ・オールドフィールド博士は、小説のプロットにおいても写真が重要な役割を果たしていると指摘する。たとえば、『茶色の服の男』(1924)のキーアイテムは謎めいた写真フィルムの容器で、ミス・マープル・シリーズの『鏡は横にひび割れて』(1962)では、ある写真が犯人の動機や正体を解き明かす手がかりであることをフィナンシャル・タイムズ紙に語っている。

今回展示される写真は、クリスティー・アーカイブ・トラストが所蔵する資料のごく一部だが、オールドフィールド博士は日本のデザイン史家・菅靖子と共同で、クリスティーの写真に特化した展覧会の企画を進めているという。開催は来年、大英図書館のエントランスホールで行われる予定だ。

アガサ・クリスティー愛用のコダック No.1 シリーズIII オートグラフィック・カメラ。Photo: © The Christie Archive Trust
1907-08年頃、エジプトのカイロを初訪門した際の様子を記録したアガサ・クリスティーののフォトアルバム・Photo: © The Christie Archive Trust
アガサ・クリスティーが使用していたレミントン社の1937年製タイプライター。Photo: © The Christie Archive Trust
マンドリンを弾く若い頃のアガサ・クリスティー。Photo: © The Christie Archive Trust
イギリスおよびアメリカでの初版本。Photo: © The Christie Archive Trust
2017年の映画『オリエント急行殺人事件』のスチル写真。Photo: © 20th Century Studios

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