兵馬俑に残る2000年以上前の「指紋」から新説が浮上──隆線の間隔が示す、製作者の実像

中国・西安近郊の兵馬俑に残された指紋を分析した最新研究で、製作者に関する従来の認識を覆す可能性が浮上した。指紋の隆線の間隔から見えてきた、古代の製作現場の実態とは。

秦の始皇帝陵の兵馬俑。Photo: Getty images

中国・西安近郊の兵馬俑の製作に、女性や子どもも携わっていた可能性を示す研究成果が、学術誌「Journal of Cultural Heritage」で発表された。Phys.orgが伝えた。

兵馬俑は紀元前3世紀、中国を初めて統一した秦の始皇帝の墓を守るために作られた、数千体もの等身大の兵士や馬の焼き物の像だ。秦代の大規模な手工業生産は成人男性だけが担ったと考えられてきたが、兵馬俑の作り手に関する直接的な証拠は乏しかった。

西安の秦始皇帝陵博物院に所属するシャオシー・リー率いる研究チームは、像に残された指紋に着目。1号坑T23区画から出土した兵士像36体に残る指紋79点を分析した。指紋は腕や甲冑、頭部などに残っており、研究者たちはこれを撮影し、指紋を形作る隆線の間隔を測定した。この間隔は、子どもから大人への成長に伴って広がる傾向があるという。

分析には、従来の線形回帰分析に代えて「ベイズ混合モデル」を採用した。これは、年齢や性別が異なっても指紋の特徴が重なり得ることや、推定に伴う不確実性を考慮できる統計手法だ。

その結果、分析対象の指紋のうち、成人男性に由来するものは約45%、成人女性は約33%、15歳未満の子どもは約22%と推定された。著者らは論文で、「モデルの結果は、工人の集団が成人男性だけで構成されていたわけではないことを示している」と記している。

ただし、これらは指紋の構成比であり、製作に携わった人々の人数比ではない。同一人物が複数の指紋を残した可能性もある。また、調査対象は広大な陵墓群の一部に限られるため、結果が兵馬俑全体の製作体制を表しているとは限らない。論文でも、調査対象のT23区画が1号坑の一部に限られるため、今回の結果が特定の製作段階や製作集団の労働構成を反映している可能性を指摘している。

こうした制約はあるものの、今回の研究は、兵馬俑の製作を担ったのは誰だったのかという問いに新たな手がかりをもたらした。

あわせて読みたい