古代都市遺跡から「世界最古の老人ホーム」跡──1600年前の高齢者の生活を示す貴重な発見
イスラエル・ハイファ大学の研究チームによる古代都市ヒッポスの発掘調査で見つかった施設跡が、世界最古の老人ホームである可能性が高いと8月18日に発表された。

イスラエルにあるハイファ大学の研究チームは、イスラエル北部のガリラヤ湖近郊にあるヒッポス国立公園で発掘調査を実施。古代都市の遺跡から4世紀後期から5世紀前期に建てられた施設の遺構を発見したと8月18日に学術誌「Zeitschrift für Papyrologie und Epigraphik」に発表された。
The Times of Israel紙によると、遺構は都市の中心部の2つの大通りの交差点沿いで見つかった。建物の入り口部分には目立つように色とりどりの石を使った見事なモザイク画があり、そこにはギリシャ語で「長老たちに平安あれ」と書かれていた。
このことから、プロジェクトの共同責任者であるマイケル・アイゼンベルクらは、この遺構は世界最古の高齢者のための養護施設の証拠であるとし、同紙に「高齢者への関心と配慮が現代だけの概念ではなく、すでに1600年前には制度や社会概念の一部だったという生きた証です」と主張した。

また、老人ホーム跡の付近では、7つの教会や神殿、裁判所と2つの劇場が見つかっている。それを受けて研究者たちは論文で、「この施設は都市生活の構造に組み込まれており、その時代の社会的価値観を反映した共同体的かつ精神的な施設でした。碑文は高齢者に直接語りかけており、これは古代において高齢者はどういう日常生活を送ったかの洞察を与える稀な発見です」と述べている。
さらに彼らは次のようにも結論づけた。
「この発見は、これまで家族の負担のみで行われていた高齢者の介護を、キリスト教の共同体で引き受け始めた様子が示されています。これは修道制のような、伝統的な家族構造の外でのキリスト教的生活様式の新たな在り方を反映している可能性が高いのです」
The Jerusalem Post紙の取材によると、今後同プロジェクトでは、仮説を確かなものにするために厨房、浴場、そして診療所跡の調査を重点的に行うという。