ディオニュソスとヘラクレスが「酒飲み対決」! 新発見の石棺は「故人を新たな世へ送る象徴」か
イスラエル考古学庁による古代都市カエサレアでの発掘調査中に、大理石の石棺を発見。そこには酒の神ディオニュソスと神話の英雄ヘラクレスが「酒飲み対決」をしている姿が描かれていた。

イスラエル考古学庁が古代都市カエサレアの城壁外で発掘調査を行っていたところ、柔らかな砂丘の中から見事な彫刻が施された大理石の石棺が現れた。エルサレム・ポストが報じたところによると、発見した考古学者のノハル・シャハルとシャニ・アミットは「まるで映画のワンシーンのようでした」と振り返った。
イスラエル考古学庁が石棺を調べた結果、2世紀または3世紀頃のものと推定された。丹念に修復・割れた部分の組み立てを行ったところ、酒の神ディオニュソスが中央に立ち、マイナデス、サテュロス、ヘルメス、パンといったギリシャ神話の神々や動物に囲まれて陽気に酒宴を行っている姿が現れた。だが、その横で、半神半人の英雄ヘラクレスがうつろな表情でライオンの皮に横たわり、杯を掲げている。研究者たちによると、これはディオニュソスとヘラクレスが「酒飲み対決」をして、明らかにヘラクレスが敗れた様子が描かれているという。

シャハルによると、ディオニュソスとヘラクレスの酒飲み競争の場面は古代ローマ美術のモザイク画などでは知られたモチーフであるが、石棺に使われたものは初めてだという。シャハルは、故人を送るためにこのモチーフが選ばれた理由について、こう推測する。
「飲酒が解放と来世への移行の象徴となっており、酒を飲む彼らは故人の最後の旅路に付き添っているのです。これは、ローマ人が死を終わりではなく、新たな存在の段階への変容と見なしていたことを反映している可能性があります」
石棺がカエサレアの城壁外で見つかったことで、古代都市が従来考えられていたよりも広範囲に及んでいた可能性が示された。今回の発見について、イスラエル考古学庁のエリ・エスコシド長官は、「これはローマ世界における生活と信仰の姿を反映する示唆に富む発見です。石棺は入念な保存処理を受けており、完了時には、この国の過去の遺産を皆に伝えるという我々の使命の一環として、一般公開される予定です」とコメントした。