イルマ&ノーマン・ブラマン(Irma and Norman Braman)

拠点:アメリカ・フロリダ州マイアミビーチ
職業:自動車ディーラー
収集分野:近現代アート

マイアミのアートシーンきっての大物コレクター、ノーマン・ブラマンは、薬品やビタミン剤の販売で富を築き、さらにフロリダとコロラドに高級車ディーラーのネットワークを展開して資産を増やした。米フォーブス誌によると、2019年12月時点の資産額は26億ドル(約3800億円)だが、半分以上が美術品の評価額だとされている。そのコレクションには、1979年に収集を始めるきっかけとなったアレクサンダー・カルダー、2011年にニューヨーク近代美術館(MoMA)の展覧会に貸し出したアンディ・ウォーホルやウィレム・デ・クーニングなど、近現代アートの一流作家による作品が数多く含まれている。

オークションでも、ブラマン夫妻は高値で競り合うことを厭わない。「アーティストの最高傑作を買うなら、いくら払ってもいい。そのうち市場の評価が追いついてくるから」と、ノーマンは2011年にフォーブス誌に語っている。また、世界最高峰のアートフェア、スイスのアートバーゼルには少なくとも20年以上足を運んでいるが、手ぶらで帰ることはまずない。ピカソを2点買った年もあれば、アメリカのミニマリスト、ダン・フレイヴィンのネオン作品の購入をものの10分で決めたこともある(このネオン作品は現在、マイアミのブラマン邸の玄関を照らしている)。1990年代後半、ノーマンはアートバーゼルのフロリダへの誘致に関わり、スイスのバーゼルに次ぐ世界で2つ目のアートバーゼルをマイアミビーチで開催するために尽力したと言われる。

さらにブラマン夫妻は、ICAマイアミ(Institute of Contemporary Art, Miami)の移転先となる約3500平方メートルの施設建設にも資金を提供。2014年にノーマンは、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に「費用がいくらであれ、やるのみだ」と答えていた。

10代の頃、NFLのフィラデルフィア・イーグルスのトレーニングキャンプで飲料水係をしていたノーマンは、1986年から94年まで同チームの共同オーナーを務めた。また、フロリダ州選出の上院議員、マルコ・ルビオの長年の支援者でもあり、2016年にルビオが共和党の大統領選予備選に立候補したときにも(途中で撤退)、約1000万ドル(約14億5000万円)の資金協力を行った。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。
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