エストレリータ&ダニエル・ブロツキー(Estrellita and Daniel Brodsky)
職業:不動産業
収集分野:建築家(特にル・コルビュジエとアレクサンダー・カルダー)のドローイング・彫刻・絵画、戦後美術、現代アート、ラテンアメリカの戦後・現代アート
エストレリータ・ブロツキーは長年にわたってラテンアメリカ美術を支援し、それを受け入れる美術館の必要性を訴えてきた。「世界が本当に1つになれば、『ラテンアメリカ部門』などという区分けは必要ありません。全ての芸術は完全に統合されるからです」と、彼女はラテンアメリカ美術の専門メディアArte Al Díaに語っている。しかし、そうした考えを持つ美術館は、近年に至るまでほとんどなかった。ブロツキー夫妻はこうした状況を変えようと、ラテンアメリカ美術の振興を自らの慈善活動の中心に据えて取り組み、その一環としてロンドンのテート・モダン、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館といった主要美術館でキュレーター職向けの基金を創設した。メトロポリタン美術館では、ニューヨークで不動産会社を経営するダニエルが2001年から理事を、2011年から2021年まで理事長を務めている。
エストレリータのラテンアメリカ美術への情熱は、支援・収集だけでなく研究へと対象を広げ、ニューヨーク大学インスティテュート・オブ・ファイン・アーツで美術史の博士号を取得するまでになった。彼女はMoMAのラテンアメリカ・カリブ海地域の新規収蔵品検討委員会のメンバーとなり、ニューヨークのエル・ムセオ・デル・バリオで理事を務めたこともある。さらにブロツキー夫妻は、ラテンアメリカ美術の展覧会・出版・研究のための施設「アナザースペース」をマンハッタンのチェルシー地区に創設した。
エストレリータがコレクションしている作家たちは、さまざまなプレゼントを彼女に贈っている。たとえば、フレッド・トマセリは、アナザースペースでの展覧会に参加した後、アンデス原産のサンペドロサボテンをプレゼントし、フリオ・ル・パルクは会食中に色鉛筆で描いたカラフルで緻密な迷宮の絵を贈った。また、アルトゥール・レッシャーは、スペイン語で「小さな星」を意味する彼女の名前にちなんで、「特徴的な形の穴があいた小さな星」をあしらった彫刻を制作したという。
2024年にエストレリータは、ダン・サリックの後任としてワシントンD.C.にあるハーシュホーン博物館と彫刻の庭の理事長に就任。6000万ドル(約88億円)を投じた彫刻の庭の改修や、美術館のデジタルプロジェクト推進に注力したいと考えている。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。