AIの描いた絵が「アートコンテストで1位」に賛否両論。作者は何を意図したのか?
米国コロラド州で開かれたアートコンテストの結果をめぐり、AIアートへの賛否両論が巻き起こっている。この公募展のデジタルアート部門で1位を獲得したのが、テキストから画像を生成するAIプログラム、ミッドジャーニー(Midjourney)を使った作品だったからだ。
この話題は、デジタルアーティストのジェネル・ジュマロンのツイートによって拡散した。ツイートの内容は、Sincarnateというユーザー名で受賞したゲームデザイナーのジェイソン・アレンが、1位獲得の喜びを報告するディスコード(Discord)のスクリーンショットだ。
ジュマロンは、「AIが生成した作品でアートコンテストに応募し、一等賞を獲得した人がいる。そりゃあもう、クソみたいな話だ」と書き添えている。
この投稿に対しては、デジタル分野のみならず、アート界全体の作家から多数の怒りや絶望のコメントが付いている。クリエイティブな仕事はAIによる自動化から逃れられる聖域だとされていたのに、自分たちの職が奪われる日が来るかもしれないという不安が広がっているのだ。
一方で、受賞者のアレンは後悔するようなそぶりは見せていない。コロラドの地元紙プエブロ・チーフテンの取材に、「人工知能のアートで自分の主張を表明したかった。その狙いは達成できたと思うし、謝るつもりもない」と語っている。
アレンは、ミッドジャーニーでさまざまな文章を試した中から作品を3点選んで応募したが、受賞作品に入力された文章がどんなものかは、現時点で公表していない。プエブロ・チーフテン紙によると、各作品の価格は750ドル。これは制作に費やした約80時間の時間に見合った金額だとアレンは考えている。
受賞作の《Théâtre D’opéra Spatial(オペラ劇場空間)》は、遠くの風景を見渡せる巨大な円形の窓がある金箔張りの空間に、3人の人物がいるという豪華な情景を描いた作品だ。この印象的な作品が受賞することを、アレンは当初から期待していたという。目的は受賞そのものではなく、アーティストたちの立場を主張するためだった。
「アートのコミュニティは存亡の危機に瀕していると感じる……その大きな要因は、誰もが利用できるAIという破壊的なテクノロジーだ」とアレンは言う。「AIがクリエイティブな職を奪うことはない、アーティストや彫刻家が心配するようなことではないと言われている一方で、私たちは今まさにそうした危機的状況に直面している」
アレンは、将来的にデジタルアート賞のサブカテゴリーとして、AI部門を設けることも考えるべきだと提案している。(翻訳:清水玲奈)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月1日に掲載されました。元記事はこちら。