2200年前の巨大浴場跡を古代エジプトの都市で発見。運動施設も併設?
アフリカ大陸と アラビア半島にはさまれた紅海西岸にある古代エジプトの港湾都市ベレニケで、2200年前の巨大な浴場の遺跡が見つかった。紀元前275年に建設されたベレニケは、貿易や軍事の要衝だった。
大プリニウスが記したところによると、ベレニケ(ベレニス・トログロディティカとも呼ばれる)は、古代エジプトのプトレマイオス朝を後ろ盾に、戦略的要衝として栄えていたという。当時多くの人で賑わっていたベレニケは公共施設が充実しており、巨大な公衆浴場もその1つだった。
この浴場にはトロスと呼ばれる円形の建造物が2つあり、そこには熱い湯だけでなく、ぬるま湯や冷水を湛えた14もの浴槽があった。また、浴槽を満たすため、1つの井戸から汲んだ水が2つの大きな貯水池に溜められていた。
遺跡の発掘調査を率いるのは、ポーランド科学アカデミー地中海・オリエント文明研究所のマレク・ヴォジニャク准教授だ。彼は科学ニュースサイトのライブ・サイエンスに、浴場の西側にはギュムナシオン(運動競技の訓練のための施設)が建っていた可能性があると語っている。
ヴォジニャクの研究チームは、建築様式などのギリシャ文化が北アフリカに広がった古代エジプトのヘレニズム時代(紀元前323年〜紀元前30年頃)の遺跡調査をしている。現在ベレニケで進められている発掘調査は、ヴォジニャクと同じ研究所の考古学者、マリウシュ・グウィアズダ准教授と、米デラウェア大学の歴史学教授で古代の世界経済が専門のスティーブン・サイドボサムを中心に行われている。
ヴォジニャクによれば、この浴場が稼働していた当時、ベレニケは貿易の一大拠点だった。また、東アフリカに生息し、軍事用に使われていた戦象の供給地として栄え、多くの人口を抱えていたという。
さらに、この都市には大きな軍事基地もあった。一般に公衆浴場は「仕事や運動の後に人々が集いリラックスする場所として利用されており、しばしばギュムナシオンが併設されていた」とヴォジニャクは説明している。(翻訳:野澤朋代)
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