ピエール・チェン(Pierre Chen)
拠点:台湾・台北
職業:電子機器製造
収集分野:近現代アート
ピエール・チェンは、1977年に設立した電子部品製造企業、ヤゲオコーポレーションで財を成した。米フォーブス誌によると、台湾トップクラスの資産家とされるチェンの2024年10月時点の純資産は67億ドル(約9800億円)とされる(資産額は日々更新される)。しかし、チェンには他の資産家と違うところがある。それは起業前からアート収集を始めたことだ。
サザビーズマガジンに掲載された2014年のプロフィールによると、チェンのコレクションの始まりは1976年。まだ学生だったときに1年半かけて貯めたお金で、香港のアーティスト、チャン・イー(張義)の木彫作品を2万5000台湾ドル(約12万円)で購入したという。その後、長年にわたり、トーマス・シュトルート、ゲルハルト・リヒター、タン・ティンポー、蔡國強などを幅広く収集。アートニュースペーパー紙によれば、ピカソを7点、フランシス・ベーコンを2点、ゲルハルト・リヒターを10点所有している。
2019年1月、チェンはアートニュースペーパー紙に対し、大プロジェクトの計画をほのめかすようにこう語った。「将来的には、ヤゲオ財団のコレクションを展示できるスペースを作りたいと思います。地域社会におけるアート分野の取り組みやプロジェクトに関わる可能性もあります」。これはピエール・チェンが私設美術館を開設するということだろうか? チェンの広報担当者がUS版ARTnewsに返信したメールの答えは「ノー」で、少なくとも当分の間、ヤゲオコレクションはチェンがプライベートで楽しむことになるという。
「私が携わっているビジネスは変化が非常に速く、常に新しい技術が市場に出てくるので、毎日が戦いと言っても過言ではありません。人生のバランスを取るためにはアートと音楽が必要なのです」と、チェンはサザビーズマガジンに語っている。
チェンはまた、US版ARTnewsの取材に、コレクションの中で最も気に入っている作品はサイ・トゥオンブリーの《無題(ローマ)》(1971)とフランシス・ベーコンの《ルシアン・フロイドの肖像のための3つの習作》(1965)だと答えている。2015年5月には、ニューヨークのクリスティーズでピーター・ドイグの絵画《Swamped》(1990)を2600万ドル(約38億円)で落札し、ドイグのオークション記録を作った。
チェンはまた、30年以上にわたるワインのコレクターでもあり、フランス・ブルゴーニュ地方にワイナリー(フェヴレ ミュジニー)を所有。2021年、サザビーズは香港でチェンのワインコレクションのオークションを開き、1140万ドル(約17億円)を売り上げている。この結果は、アジアで行われたシングルオーナーのワインセールとしては史上2位の金額だった。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。