今週末に見たいアートイベントTOP5:ドナルド・ジャッドの展示哲学に迫る、サム・フォールズが新シリーズを発表

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

ジャッド|マーファ展(ワタリウム美術館)より、ウェルフェア・アイランド 1956年 キャンバスに油彩 ジャッド財団蔵 Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.

1. サム・フォールズ(小山登美夫ギャラリー六本木)

Spring Flowers, Autumn Moon (春花秋月,Shunkashūgetsu)
2025
Glazed ceramic with glass in brass frame, flowers, water
φ 83.8 cm
©︎ Sam Falls
サム・フォールズ作品、制作プロセス
Bellows 1
2025
pigment on canvas
198.3 x 162.4 cm
©︎ Sam Falls

雨や風が完成させる、フォールズの作品

自然環境と密接に関わりながら作品を制作するアーティスト、サム・フォールズの個展。キャンバスを屋外に設置し、植物を配置して水に反応する顔料を散布し、そのまま放置することで、雨や雪、霧、朝露といった自然現象そのものを描画の主体として取り込む手法で知られる。制作期間は一晩から数カ月に及び、その時々の気候や環境条件によって表面の表情が変化するため、作品は自然と時間が刻んだ痕跡の記録として成立する。

当初物理学を学んでいたフォールズは、数学的思考ではなく経験を通して世界と接続する手段として制作を始めた。写真を出発点としながらも、撮影と鑑賞の時間差に違和感を覚え、カメラを手放し、露光や時間といった概念だけを残した制作へと移行している。ペインティングにおいて、植物を取り除いて現れるイメージが特徴的で、ろうけつ染や「フォトグラム」のような最初期の写真の露光の手法とも通じる。本展では、生け花作品から着想した新作「Ikebana」シリーズのほか、天然染料を用いた「Sun Fade」、植物を封入した彫刻作品などが展示される。

サム・フォールズ
会期:1月24日(土)〜2月28日(土)
場所:小山登美夫ギャラリー六本木(東京都港区六本木6-5-24)
時間:11:00〜19:00
休館日:日月祝


2. ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット展(京都国際マンガミュージアム)

猫化パンデミックを描くマンガの世界

猫に触れると人間が猫になってしまう現象「ニャンデミック」によって人類が絶滅の危機に追い込まれる──そんな異色の設定で話題を呼んだマンガ作品『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』(原作:ホークマン、作画:メカルーツ)を紹介する展覧会。デジタル作画出力の原画約150点を中心に、ホークマンとメカルーツがどのように物語を組み立てているのかを示す打ち合わせ資料約50点、さらにアニメ版映像や設定資料なども展示され、作品世界の制作過程が多角的に読み解ける構成となっている。

可愛い猫と終末的状況というギャップが生むユーモアと緊張感を、立体的に体感できるのも本展の魅力。フォトスポットやトークイベントも用意され、マンガファンだけでなく幅広い来場者が楽しめる内容だ。猫の日(2月22日)が近づくこの季節、猫という存在の抗えない魅力を再確認する機会にもなるだろう。

ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット展
会期:2025年12月13日(土)〜2026年4月7日(火)
場所:京都国際マンガミュージアム(京都府京都市中京区烏丸通御池上る)
時間:10:00〜17:00(入場は30分前まで)
休館日:毎週水曜(祝日の場合翌日)、2月16日(月)〜20日(金)


3. O JUN+松井智惠「立ち話」(BEAK 585 GALLERY)

展示風景。
展示風景。
展示風景。

10年の往復から生まれた対話の絵画

画家O JUNと美術家・松井智惠による二人展。2010年代半ばの展覧会「縁側の立ち話」以降、二人は日常の出来事や制作について断続的にやり取りを続けてきた。ガラケーのメールからスマートフォンへと通信手段が変わっても対話は途切れず、その蓄積が本展の基盤となっている。会場の中央に広がる、O JUN+松井智のリトグラフ集を中心にO JUNの紙作品や松井智惠の油彩が展示され、対話の軌跡を視覚化するような構成だ。

「立ち話」は共同制作でもコラボレーションでもない。季節の挨拶や雑談のような断片的な言葉の往復から画面が立ち上がり、互いの視線や思考が静かに交差する。緊張感と信頼が同時に漂う関係性そのものが展示空間に現れ、日常的なやり取りの中に潜む創造の契機を浮かび上がらせる。

O JUN + 松井智惠「立ち話」
会期:2月9日(月)〜3月7日(土)
場所:BEAK 585 GALLERY(大阪府大阪市北区曽根崎2-7-14)
時間:12:00〜19:00
休館日:水木


4. Collection – Correction メディアアートの再編成と作品の延命(WALL_alternative)

藤田クレア Invisible soundscape ~version 1 : (1 + √5)/2+x~ / 2020(Photo by 加藤健)
藤田クレア。(C)︎ARToVILLA / photo: Daisuke Murakami
三原聡一郎作品
三原聡一郎

メディアアートは100年後に存在するか

テクノロジーと不可分の表現であるメディアアートの保存と修復を主題に据えた企画展。ソフトウェアやセンサー、ネットワークなど技術的基盤に依存する作品は、機材や規格の変化によって存続が困難になる可能性を常に抱えている。本展は、長年メディアアートの現場と制度に関わってきた畠中実をゲストキュレーターに迎え、「10年後、100年後にも作品として存在できるのか」という根源的な問いを出発点に構成されている。

展示では、自然物に刻まれた情報を音へ変換する藤田クレアの作品資料、三原聡一郎が近年用いるコンポスティング装置、斉田一樹との共同制作によるサウンドインスタレーション《moids》の資料などを紹介。さらにトークプログラムも開催され、技術更新と作品保存のあいだに横たわる問題を多角的に検証する。メディア表現の未来を考えるための実践的な思考の場となるだろう。

Collection – Correction メディアアートの再編成と作品の延命
会期:2月11日(水)〜3月7日(土)
場所:WALL_alternative(東京都港区西麻布4-2-4)
時間:18:00〜24:00
休館日:日曜


5. ジャッド|マーファ展(ワタリウム美術館)

ドナルド・ジャッド、マンサナ・デ・チナティの中庭にて、自作《デイヴ・シャックマンに》(1964年)と共に 1975年撮影
Photo Jamie Dearing © Judd Foundation. Jamie Dearing Papers, Judd Foundation Archives, Marfa, Texas. Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.
ウェルフェア・アイランド 1956年 キャンバスに油彩 ジャッド財団蔵
Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.
無題 1991 年 陽極処理したアルミニウム、黄色に透明な琥珀色のプレキシグラス ジャッド財団蔵
Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.
無題 1955年 キャンバスに油彩 ジャッド財団蔵
Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS,NY/JASPAR, Tokyo.
15点の無題の作品 1980–1984年コンクリート チナティ財団、テキサス州マーファ
Permanent collection, The Chinati Foundation, Marfa, Texas. Photo by Florian Holzherr, courtesy The Chinati Foundation. Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.

テキサス・マーファに残るジャッドの思想

20世紀美術を代表するアーティスト、ドナルド・ジャッドは、1970年代にニューヨークを離れ、 メキシコにほど近いテキサス州の町マーファに移り住んだ。そこで彼は町に残る建物を、生活の場、制作の場として作 り変え、さらに自身の作品やダン・フレイヴィン、ジョン・チェンバレン、イリヤ・カバコフなどの作家の作品の恒久的な 展示スペースを作るためチナティ財団を設立した。ジャッドがマーファーに残した空間について、作品と資料の両面から検証する展覧会。ジャッドは、建物そのものを改修し、生活・制作・展示が不可分に結びつく環境を構築した。

本展では1950年代の初期絵画から60〜90年代の立体作品、ドローイング、図面、映像資料までを通して、その思想の全体像を紹介する。1978年に和多利志津子が企画した「ジャッド展」の記録も公開され、日本との関係史にも光が当てられる。空間そのものを芸術とみなした思考の射程を改めて実感できるはずだ。

ジャッド|マーファ展
会期:2月15日(日)〜6月7日(日)
場所:ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6)
時間:11:00〜19:00
休館日:月曜(2月23日、5月4日は開館)

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