大英博物館で「サムライ」展。現代の文化芸術にも影響を与えた武士の実像をひも解く
ロンドンの大英博物館で「Samurai(サムライ)」展が開催中だ。欧米では、黒澤映画やドラマ「SHOGUN 将軍」、最近ではゲームを通じ、名誉を重んじる戦士としてサムライのイメージが形成されてきた。同展ではその通念を覆すさまざまな側面に光を当て、1000年にわたる武士階級の進化と神話の形成を考察している。

大英博物館で開催されている特別展「Samurai(サムライ)」には、同館の所蔵品を中心に、国内外から約280点の貴重な展示品が集結している(5月4日まで)。
江戸幕府2代将軍の徳川秀忠がイングランド国王ジェームズ1世に贈った甲冑、刀や兜のほか、屏風、木版画などの美術品の中には天正遣欧使節団の一員としてバチカンで教皇に謁見した伊東マンショの肖像画も含まれている。この絵はミラノのトリヴルツィオ財団の所蔵品で、ドメニコ・ティントレットが手がけたものだ。
展示は3つのセクションで構成されている。1つ目は「Rise of the samurai(サムライの台頭)」で、1600年までの中世の戦いと文化がテーマ。2つ目のセクションは「The long peace(長い太平の世)」として、戦がなくなった江戸時代の武家の姿を紹介している。
3つ目のセクション「After the samurai(サムライが消えた後)」では、明治時代に武士階級が廃止されたのち、次第に日本のシンボルとして扱われるようになったサムライのイメージが、アートやエンタテインメントにインスピレーションを与えたことが示されている。
この最後のセクションでは、鎧兜を着た人物をモチーフとし、過去と現在が入り混じるユニークな絵画や彫刻を制作している野口哲哉の作品、ラバーダックにまたがる武士の彫刻も見ることができる。
そのほか、甲冑に着想を得たルイ・ヴィトンのコレクション、「アサシン クリード シャドウズ」や「仁王3」といった人気ビデオゲームを通じ、サムライのイメージが現在も世界中でクリエイターたちを刺激し続けていることが検証されている。
「武家の女性」にも光
一方で、「戦う男性」という従来のサムライのイメージを問い直す側面もある。江戸時代から明治維新まで約260年の間、それまでのような戦乱はなくなり、武士階級は統治者として、また学者や芸術家の庇護者としての役割を担った。
また、大英博物館・日本コレクションのキュレーター、ロジーナ・バックランド博士は、「武士階級の半数は女性だった」とし、武家における女性の存在に光を当てている。展示品に含まれているのは、江戸城内で消防活動に従事した女性が着用した朱色の消防用羽織と頭巾だ。
バックランド博士はさらに、武士の生活の実態は一般の認識とは大きく異なっているとしてこう述べている。
「本展は、サムライの神話から現代に至るまでを深く掘り下げる初の展覧会です。その多様な役割、そして彼らがどのように自己を表現し、他者からどのように表現されてきたかを探ることで、日本の豊かな文化史を来場者に紹介します」














