J. パトリック・コリンズ(J. Patrick Collins)
拠点:アメリカ・ダラス、ロサンゼルス、ニューヨーク
職業:ファミリーオフィス(コリンズ・パーミアン)
収集分野:現代アート
資産の管理運用を行うファミリーオフィス、コリンズ・パーミアンの代表であるJ. パトリック・コリンズは、ロサンゼルス、ダラス、ニューヨークを行き来する生活を送っている。同オフィスはダラスを拠点とし、テクノロジー、エネルギーを中心に、さまざまな産業にグローバル規模での投資を行っている。
家族にコレクターがいたわけではないコリンズが美術に興味を持ったのは、コロンビア大学で歴史と美術史を専攻していた頃で、教授の中にはポストモダニズム分野の著名美術史家、ロザリンド・クラウスもいた。コリンズが拠点としているダラスは、古くからアートパトロンが多い地域として知られているが、その中で彼は次世代のコレクターを代表する存在だ。ダラス・アートフェアのディレクターであるケリー・コーネルは、2020年にUS版ARTnewsにこう語っている「ダラスのコレクターシーンは、現代アートやこれまでにない分野のアートを収集する新たなプレーヤーの登場で、層がより厚くなっています」
コリンズが20代前半に初めて買った作品はライアン・マッギネスの絵画で、以来、収集歴は約20年になる。その中心は、ウルトラコンテンポラリーと呼ばれる新進作家の現代アートや、ポストコンセプチュアル・アート、ビデオアート、インスタレーションの発展に多大な貢献をした20世紀後半の巨匠たちだ。所蔵作家には、ジュリア・フィリップス、エマ・マッキンタイア、ダニエル・ディーン、マルティーヌ・シムズ、ジュリア・ロンメル、アリア・ディーン、ニキータ・ゲイル、ジョアンナ・ピオトロフスカ、クリストドゥロス・パナイオトゥのようなコリンズと同世代の作家のほか、スターテヴァント、トム・バー、ダン・フレイヴィン、ローズマリー・トロッケル、クリストファー・ウィリアムス、ジョン・マクラッケン、ケン・プライス、マティアス・グローベル、エミリー・カーメ・ウングワレーなど上の世代のアーティストもいる。
「私はアーティストと過ごすのが好きなんです」。コロラド州のアスペン美術館で、コリンズは所蔵作家との友情をこう語った。近年は、ロサンゼルスを拠点とするギャラリー、シャトー・シャトーの創設者で、彼のパートナーでもあるリブ・バレットとの共同コレクションを始めている。
コリンズは現在、ニューヨークのディア芸術財団の理事で、過去にはニューヨークのエル・ムセオ・デル・バリオ、テキサス州のフォートワース近代美術館やマーファにあるチナティ財団の理事を務めた経験もある。さらに2021年からは、トム・バーの「ザ・トリントン・プロジェクト」のリードパトロンを務めている、このプロジェクトは、コネチカット州リッチフィールド郡にある使われなくなった工場をスタジオとして使用するもので、コリンズによると「発展的で実験的なプロジェクト」だという。
コリンズは、US版ARTnewsに自らの収集活動についてこう説明している。「アーティストのプロジェクト実現や、彼らのビジョンが評価され、報われることにリアルタイムで貢献できることが、私がコレクションを始めたときの原動力でした。また、あれこれつまみ食い的に買うのではなく、決まったアーティストを深掘りして収集することを心がけています。これは今も変わらず私の収集活動の中心であり、モチベーションを高める要素ですが、最近では歴史的な作品にも範囲を広げています。そうすることで、より若い現役アーティストたちの作品が、彼らの実践に直接影響を与えた作家や、新しい作品が作られるコンテクストに大きな影響を与えた作品と共存し、そこから生き生きした対話が生まれるのです」