ヤン・ドゥ(Yan Du)

拠点:イギリス・ロンドン
職業:相続、起業家
収集分野:近現代アート、戦後美術

幼少期を中国で過ごしたヤン・ドゥは、伝統的な中国絵画を学んで育った。アートは常に生活の一部だったという彼女が、本格的にその世界で生きていこうと考え始めたのは、大学生としてロンドンに移った頃だ。それから10年以上が過ぎた現在、約300点の作品を所有するヤンは、ロンドンを拠点とするアートパトロン兼コレクターとして活動している。

ヤンのお気に入りは、エヴァ・ヘス、草間彌生、ジョージア・オキーフ、リー・クラスナー、ルイーズ・ブルジョワといった女性作家だが、娘の誕生後はさらに女性アーティストの作品購入に力を入れるようになったという。

最近では、単にアジアの現代アーティストを支援するだけでなく、中国以外のアジア諸国のアートに対する理解を深める活動にも力を注いでいる。2019年にはNPO団体アシメトリー・アート・ファウンデーションを設立し、奨学金やキュレーター職の斡旋を通じて、中国文化圏の現代アートに関する知識の普及やキュレーターの育成に努めている。アシメトリーはまた、ロンドンのチゼンヘイル・ギャラリーやデルフィナ財団、ホワイトチャペル・ギャラリー、ロンドン大学ゴールドスミス校など、数多くの団体と提携している。2022年には、ロンドン大学コートールド美術研究所と共同で、中国現代アートの研究プログラムを開始した。

アシメトリーは設立後の数年間、物理的なスペースを持たずに活動していたが、2022年にイーストロンドンに常設の本部を開設。ライブラリーやキュレーター用の個別ワークスペース、共有ダイニングとレセプションエリアを備えたこの場所で、イベントやパブリックプログラムの開催を予定している。

2021年、ヤンはアートネットニュースにこう語った。「パトロンやフィランソロピストとして、アート界や社会全般に対して果たすべき役割があるという社会的責任を強く感じています。ただ、理解を深めるための機会作りには継続的な努力が必要です」

同時に、ヤンは自分のコレクションの拡充にも力を注いでいる。最近では、エヴァ・ヘスの彫刻、2019年のヴェネチア・ビエンナーレに展示された孫元と彭于によるキネティック(動きを取り入れた)アート、シドニー・シェン、ティムール・シーチン、アナ・メンディエタ、クロード・カウン、シュアン・リー、マリアンナ・シネットの作品を購入。シネットの作品は、2022年のアート・バーゼル・アンリミテッドで購入している。