ラリー・フィンク(Larry Fink)

拠点:アメリカ・ニューヨーク
職業:資産運用会社(ブラックロック)
収集分野:現代アート

世界有数の資産運用会社、ブラックロックのCEOでニューヨーク近代美術館(MoMA)の理事でもあるローレンス・"ラリー"・フィンクは、2018年に米フォーブス誌の「世界で最も影響力のある人物」で28位にランクイン。2017年には同誌の「グローバル・ゲームチェンジャーズ」の25人にも選ばれているが、5.4兆ドル(約783兆円)の資産を誇る世界的企業のトップであることを考えれば、さほど驚くことではないだろう。

フィンクはまた、ウォール街の役員人事における多様性向上や報酬改革の提唱でも知られる。たとえば、1億9000万ドル(約275億円)もの巨額報酬を厳しく批判されたニューヨーク証券取引所のリチャード・グラッソCEOが、2003年に引責辞任した裏で動いていたのがフィンクだ。フィンクはそのとき、「長期的なアプローチで物事に取り組むことは、無限の忍耐と混同されるべきではない」と話していた。

しかし、フィンク自身もアート界の活動家から厳しい目を向けられている。2019年3月にネットで拡散した活動家団体、アート・スペース・サンクチュアリの請願書は、MoMAとフィンクに民営刑務所への投資をやめるよう求めるものだった。US版ARTnewsは当時、MoMAが年金基金の運用をフィデリティ・インベストメントに任せていることを報じたが、アート・スペース・サンクチュアリによると、フィデリティは民営刑務所を運営する企業の株式を保有しているという。また、米ネットメディアのジ・インターセプトが報じるところによると、フィンクは民営刑務所を運営するGEOグループとコアシビックに出資している。しかし、そのことでフィンクがMoMAの理事を辞任するよう求められることはなかった。一方、アート・スペース・サンクチュアリの創設者で、ニューヨークのニュー・スクール大学で人類学の助教授を務めるアブー・ファーマンは、このキャンペーンは「民営刑務所の廃止を求めるもの」だとし、US版ARTnewsにこう語った。「ブラックロックが資金を引き上げれば、民営刑務所企業にとって大きな痛手になる。これは効果的な手段だと考えた」

2017年には、フィンクがトランプ政権の顧問であることに抗議する活動家がMoMAのロビーでデモを行っている。その際、アーティストのココ・ファスコは「オキュパイ・ミュージアム・グループ」の声明をこう読み上げた。「人間の尊厳という我われの価値観を尊重していることの証として、ラリー・フィンクを理事会から追い出すよう求める」

ブラックロックの広報はこの件に対するコメントを控えた。なお、フィンクのコレクション内容は公表されていない。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。