今週末に見たいアートイベントTOP5: カンディンスキーやクレーほか抽象絵画250点が大集結「ABSTRACTION展」、アザラシ型AIロボットが環境問題を見つめる「エレナ・ノックス展」
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. 鴻池朋子「鴻池朋子のストラクチャー」(GALLERY MoMo Projects / 六本木)
芸術を根源的に問い直してきた鴻池朋子の展覧会の構造に迫る
絵画や彫刻、手芸、歌、映像、インスタレーションなど様々な表現手法を通し、芸術を根源的に問い直し続けてきた鴻池朋子。これまで、作品を美術館の中と外に設置することで、来館者に身体を使っての鑑賞体験を促すなど、目で見るだけが作品鑑賞ではないということを展覧会構成を通して伝えてきた。
本展では、六本木アートナイト期間中に新国立美術館、東京ミッドタウンで展示された作品の構想スケッチや、さまざまな小品、映像作品を展示する。また、ろう者でもある歴史学者の木下知威との往復書簡や、木下と5月28日に行った筆談の資料、各美術館の展示に向けた構想スケッチなども公開。6月24日(土)は朗読会とトーク(15:00 〜 17:00)を開催する。
鴻池朋子「鴻池朋子のストラクチャー」
会期:5月23日(火)〜 6月24日(土)
会場:GALLERY MoMo Projects / 六本木(東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F)
時間:12:00 〜 19:00
2. 松﨑友哉、アン・ハーディ「Tides」(Yutaka Kikutake Gallery)
ロンドンを拠点にする2人のアーティストが見つめた東京
ロンドンを拠点に活動するアーティスト、松﨑友哉とアン・ハーディを招聘。2人が2週間の東京滞在でそれぞれの観点を共有し、コミュニケーションを重ねながら制作したハイブリッドな作品を展示する。
ジェスモナイトと呼ばれる水性樹脂を用いた支持体に絵画を制作する松﨑は、石のような風合いを持つ独自のキャンバスに穴を穿ち、厚みのある平面に抽象的な図柄を描いた作品群を制作した。石板にも似た作品群は、角材と組み合わさって空間を区切り、展示室に独特のリズムを与える。
大規模なインスタレーション作品をはじめ、彫刻やフォトグラムなども手掛けるアン・ハーディは、床に置かれたボードの上に、東京で採取された土を用いて形成されたアッサンブラージュ作品を発表。吊り下がった照明は、東京で観測されるライブ気象データのプログラムによって点滅を繰り返し、都市の有り様やその無意識的な側面を可視化することで空間に情感をもたらす。
松﨑友哉、アン・ハーディ「Tides」
会期:5月27日(土)〜 7月1日(土)
会場:Yutaka Kikutake Gallery(東京都港区六本木6-6-9 2F)
時間:12:00 〜 19:00
3. 田沼武能「人間讃歌」(東京都写真美術館)
写真の巨匠が遺した「人間讃歌」。205点で70年以上にわたる軌跡を振り返る
ヒューマニスティックなまなざしで人間のドラマを写し続けてきた写真家、田沼武能。木村伊兵衛に師事し、フォトジャーナリズムの世界で活躍した後、1972年からライフワークとして世界の子どもたちを撮影。生涯で130超の国と地域に足を運んだ。2022年6月に田沼が逝去して初の回顧展となる今展は、205点で70年以上にわたる軌跡を振り返る。
第1章「戦後の子どもたち」では、第2次大戦後の東京下町の子どもたちの姿と、昭和の日本の姿を63点の作品を通じて伝える。第2章「人間万歳」では、85点の作品を通して、田沼を魅了した世界の子どもたちと、世界の人々のまなざしに触れる。第3章「ふるさと武蔵野」では、未発表作品を含む57点を展示。田沼が生涯追い続けた、戦後の高度経済成長の陰で急速に姿を変えた日本の原風景、武蔵野の自然を収めた作品群が並ぶ。
田沼武能「人間讃歌」
会期:6月2日(金)〜7月30日(日)
会場:東京都写真美術館(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
時間:10:00 〜 18:00(木曜と金曜は20:00まで、入館は30分前まで)
4. エレナ・ノックス 個展「あざらし話」(ANOMALY)
アザラシのAIロボットは北極圏のアザラシの現状をどう見るか
1975年オーストラリア生まれのエレナ・ノックスは、デジタル・メディアやパフォーマンス、立体、音楽、インスタレーションなどの表現形態を用い、人間社会に潜む問題をユーモラスに、そしてアイロニカルに作品として提示してきた。今展では、人の心を癒すために開発されたタテゴトアザラシのAIロボット「パロ」と、7チャンネルの映像で構成されるインスタレーション《あざらし話》を展開する。
ノックスは、「パロ」と共に、東京から北極圏までの長い旅に出る。近代以降、人々の営みにより地球温暖化は深刻化し、氷山は刻々と溶け、アザラシたちは居場所を失う──その状況を目にするロボット「パロ」は何を思うのか。そしてこの旅を通して変わりゆく世界を見る私たちは何を感じるのか。本展では、新型コロナウイルス発祥の地といわれる中国・武漢の廃墟となったホテルのプールで撮影した作品《Chinoiserie (ode to Wuhan)》(2019年) も日本初公開。《あざらし話》と併せて鑑賞することで、人間が「発展」という名のもとに行う行為は何をもたらすのか、考えるきっかけにしてほしい。
エレナ・ノックス 個展「あざらし話」
会期:6月3日(土)〜6月24日(土)
会場:ANOMALY(東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F)
時間:12:00 〜 18:00
5. ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ(アーティゾン美術館)
抽象絵画の歴史を約250点で展観する大規模展
19世紀中頃に写真技術が発明された直後に印象派が誕生。絵画の革新は20世紀へと引き継がれ、「抽象絵画」が生まれた。本展では、20世紀美術の主要な動向である抽象絵画の歴史を、ポンピドゥー・センター、フィリップス・コレクションの所蔵作品を含む250点で展観する。
ヴァシリー・カンディンスキー、パウル・クレー、ロベール・ドローネーらの初期作品をはじめとするアーティゾン美術館の新収蔵作品や、国内外の美術館、個人コレクションからの作品が集結。中でも見どころは、第2次世界大戦直後のフランス抽象絵画の興隆を担ったアンス・アルトゥング、ピエール・スーラージュ、ザオ・ウーキーといった巨匠たちのあまり知られることが無かった後期作品に焦点を当てた特集展示。鍵岡リグレ アンヌ、横溝美由紀ら現代作家の新作も紹介する。
ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ
会期:6月3日(土)〜 8月20日(日)
会場:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)
時間:10:00 〜 18:00(8月11日を除く金曜は20:00まで、入館は30分前まで)