マイケル・C・フォーマン、ジェニファー・ライス(Michael C. Forman and Jennifer Rice)

拠点:アメリカ・フィラデルフィア
職業:資産運用会社(FS インベストメンツ)
収集分野:近現代アート

「私たちはフィラデルフィアにコミットしています」。2022年にマイケル・C・フォーマンは、妻のジェニファー・ライスとともに取り組んでいる芸術支援について、US版ARTnewsにこう語った。夫妻は2021年にフォーマン・アーツ・イニシアチブ(FAI)を立ち上げ、フィラデルフィアのアーティストや非営利団体を支援。個人や団体を結びつけることで同地の文化振興を図ることを目的に活動している。「フォーマン・アーツ・イニシアチブは、組織やコミュニティ、アーティストが出会い、関わり合い、互いに、そしてアートから学ぶことを目標に掲げています」とフォーマンは説明する。

FAIの活動の要になっているのは、アート・ワークスとパブリック・ワークスという2つの助成金プログラムだ。フィラデルフィア財団とのパートナーシップで設立されたアート・ワークスは、300万ドル(約4億4000万円)にのぼる使途を限らない資金をフィラデルフィア全域のアーティストや非営利団体に提供している。一方、ムラル・アーツ・フィラデルフィアとのコラボレーションによるパブリック・ワークスは、アーティストと地元行政機関がタッグを組んだレジデンスプログラムで、街に設置するパブリックアートの制作を行っている。2024年5月、FAIはフィラデルフィアのウェスト・ケンジントン地区に新たな常設の施設を建設すると発表。ここには展示やパフォーマンス、イベントなどのためのスペースや、専用のコミュニティスペースが設けられる。

夫妻のコレクションの中心は近現代アートで、所蔵作家にはラシッド・ジョンソン、セシリー・ブラウン、シアスター・ゲイツ、ジュリー・メレトゥ、アダム・ペンドルトン、エルズワース・ケリー、ショーン・スカリー、カラ・ウォーカー、ローナ・シンプソンなどがいる。また、慈善活動と同様、フィラデルフィアに焦点を当てたコレクションにも力を入れ、アレックス・ダ・コルテ、ロベルト・ルーゴ、ルイーズ・フィッシュマン、ハワルデナ・ピンデル、ジェシー・クライムスといった地元作家の作品を所有している。

フォーマンは、約780億ドル(約11兆4000億円)の運用資産を扱う全米屈指の資産運用会社、FSインベストメンツのCEO。フィラデルフィアを拠点とする同社は、アメリカのみならず欧州やアジアにもオフィスを展開し、機関投資家から個人投資家まで、幅広いオルタナティブ投資サービスを提供している。

FAIの理事長およびフィラデルフィア美術館の理事を務めるライスは、フィラデルフィア学区基金、フィラデルフィア・シチズン、ビッグ・ピクチャー・フィラデルフィア、ACCTフィリーの理事も兼務。地域猫の支援団体、キャット・コラボラティブの共同設立者でもあるライスは、フィラデルフィアにおけるジェンダーと人種の公平性を推進する非営利団体ウィメンズ・ウェイから、2024年のジェンダー平等支援者として表彰された。

フォーマンは、バーンズ財団の企業リーダーシップ委員のほか、ドレクセル大学とセンターシティ地区財団の理事を務め、フィラデルフィア・エクイティ・アライアンスの創設共同議長としても活動している。受賞歴には、フィラデルフィアのコミュニティ・カレッジによる2022年コーポレート・リーダーシップ賞、フィラデルフィア名誉毀損防止連盟の2019年アメリカニズム賞のほか、2017年にはフィラデルフィアのパブリックアートへの取り組みへが評価され、ムラル・アーツ・フィラデルフィアから特別栄誉賞を受賞した。

注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。

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