ローレンス・グラフ(Laurence Graff)

拠点:スイス・グシュタード
職業:宝石商
収集分野:近現代アート

1960年にグラフ・ダイヤモンドを設立したローレンス・グラフは、「キング・オブ・ダイヤモンド」の異名を持つ宝飾業界の大物だ。同社は、紛争国とのダイヤモンド原石の取引を規制する「キンバリープロセス」を厳格に遵守していることでも知られる。グラフは15歳で学校を離れ、地元イーストロンドンの宝石商に弟子入り。1960年代初頭には、中世からロンドンの宝石取引の中心地であったハットンガーデンで、2軒の宝石店を経営するようになった。

グラフは幼い頃から美術展を見るのが好きで、初めて記憶に残ったアーティストは、テレビで見たマジシャンのチャン・カナスタ(本名のチャナネル・マイフェルーで絵を描いていた)だったと2008年のインタビューで回想している。また、「その頃は同時代のアーティストは視野になく、印象派の作品を中心に集めていた」とも話していた。現在は、アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキアなどもコレクションしており、そうした現代アート作品から宝飾品デザインのヒントを得ているという。

その一例がサイ・トゥオンブリーだ。2016年から17年にかけてパリのポンピドゥー・センターで開催されたトゥオンブリーの大回顧展から約2年後、グラフ・ダイヤモンドはトゥオンブリーのカリグラフィ的な作品に着想を得たジュエリー、「アート・インスピレーション」コレクションを発表。同コレクションには、ロシアでシュプレマティズムを提唱したカジミール・マレーヴィチ風の幾何学的なカットや、グループ・ゼロ(ドイツの前衛美術グループ)のメンバーだったイタリア人アーティスト、パオロ・シェッジの作品から着想を得たものも含まれている。なお、グラフは2013年に大英帝国勲章を受章した。

あわせて読みたい