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リヒテンシュタイン公国公爵ハンス・アダム2世(Hans-Adam II, Prince of Liechtenstein)

拠点:リヒテンシュタイン・ファドーツ
職業:リヒテンシュタイン公国元首
収集分野:オールドマスター

リヒテンシュタイン公ハンス・アダム2世の1600点以上にのぼる膨大な美術品コレクションの多くは、ウィーンのリヒテンシュタイン美術館に展示されている。ハンス・アダム2世は2004年、アート・ニュースペーパー紙にこう語っている。「我われの美術品を一般に公開するのは一族の伝統です。第2次世界大戦中、父は美術品を倉庫に避難させざるを得ませんでした。それを再び展示することができるのは、私にとって、そして家族全員にとって大きな喜びです」

このコレクションは、1938年のナチスによるオーストリア侵攻時のほか、19世紀の一時期にも倉庫に隠されていた。一族は約2740万ドル(約40億円)をかけて、宮殿の1つ、ガーデンパレスをギャラリーに改装。ここには、ラファエロ、レンブラント、ヴァン・ダイクの名作をはじめ、ルネサンスから19世紀にかけての絵画が約200点展示されている。LG銀行グループを所有するハンス・アダム2世は、ヨーロッパで最も裕福な君主であるとされ、複数のメディアによると約40億ドル(約5800億円)の個人資産があるという。

2015年のインタビューで、ハンス・アダム2世は、かつて一族が所蔵していたレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画《ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像》について尋ねられ、こう答えている。「それは、我われが売却した数多くの美術品のうちの1つです。この絵はファドゥーツ城の倉庫に保管されていました。1945年、家財の8割を置いていたチェコスロバキアにソ連軍が迫ったとき、父は美術品の一部をウィーン近郊やザルツブルク近郊の安全な場所に運んだのですが、《ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像》は、父が自ら車で運んだうちの1つです」

この肖像画はワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに500万ドル(約7億2500万円)で売却され、当時の最高額作品となった。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。

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