ジャニーン&J・トミルソン・ヒル(Janine and J. Tomilson Hill)
拠点: アメリカ・ニューヨーク
職業:投資ファンド運用
収集分野:現代アート、オールドマスター、戦後美術、ルネサンスとバロックのブロンズ彫刻
カラヴァッジョの真作なのか議論のあった《ユディトとホロフェルネス》(1607)は、2014年に偶然「再発見」され、2019年にカラヴァッジョ作としてフランスのオークションに出品されることになった。予想落札価格は1億7000万ドル(約247億円)だったが、実際に出品される数日前、引き取り手が決まったとオークションハウスが発表。ニューヨーク・タイムズ紙は、買い手はJ・トミルソン・ヒルだと伝えた。
セントルイス出身の妻ジャニーンとともに、ヒルは時代やスタイルを超えたコレクションを構築してきた。2014年1月のアート+オークション誌で、彼はこう語っている。「30年前には、異なる時代やメディウムの作品を収集しようとする人はあまりいなかったと思う。それはもっと最近の現象だ。ブロンズ像、第2次大戦後のアーティストとオールドマスター。そしてルネサンスやバロックのブロンズ像を組み合わせ、調和させるのは簡単ではない」。同じ年、ニューヨークのフリック・コレクションでは、夫妻が所蔵する15世紀半ばから18世紀にかけてのブロンズ像33点を集めた「ヒル・コレクションから:ルネサンスとバロックのブロンズ」展が開催された。
2018年秋、ヒル夫妻はニューヨーク・チェルシー地区のギャラリー街にヒル美術財団を設立。オープン直前、US版ARTnewsの取材にこう答えている。「これだけ作品があるのだから、自分が何を感じているのかを表現したい、そのための場が欲しいと思った。それと同時に、子どもたちにもアートを見に来てほしい。ここでクリストファー・ウールが、子どもたちに自分の作品について話していたらすごいと思わないか?」
取材を行ったヒルズ夫妻のニューヨークのアパートメントには、ピーテル・パウル・ルーベンスの《司令官の肖像》(1608)とフランシス・ベーコンが1956に描いた教皇シリーズの1枚が飾られ、ホワイエには、ウィレム・デ・クーニングの彫刻《The Clam Digger》(1972)が置かれていた。
ヒルは2019年にニューヨークのグッゲンハイム美術館の理事となり、2021年には理事長に任命された。また、メトロポリタン美術館の理事でもある。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。