マーヤ・ホフマン(Maja Hoffmann)
拠点:アメリカ・ニューヨーク、スイス・チューリッヒ
職業:遺産相続(医薬品)
収集分野:現代アート
マーヤ・ホフマンは、実業家エマニュエル・ホフマンの孫娘で、製薬業界の大物かつ自然保護活動家のリュック・ホフマンとダリア・ホフマン・ラズモフスキーの娘だ。彼女は1980年代のニューヨークで、スイスの演劇監督ヴェルナー・デュゲリンとともに美術品の収集を始めた。その頃コレクションしたのは、ジュリアン・シュナーベル、ジャン=ミシェル・バスキア、フランチェスコ・クレメンテ、アンディ・ウォーホルなど、ニューヨークのダウンタウンで活躍していた作家たちだ。
2012年、アメリカのカルチャー誌、Wマガジンは、「現代アート界で最も影響力のあるパトロンの1人だが、ホフマンの名前を聞いたことがない人も多いだろう」と評し、彼女がアーティストや美術館との関係についてあまり語らないことを伝えている。しかし実際は、パリのパレ・ド・トーキョー、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーズ、ニューヨークのヒューマン・ライツ・ウォッチなどでの作品展示に関わるなど、積極的な活動を行っている。
2015年にはドイツの出版社シュタイデルから、ホフマンの膨大なプライベートコレクションを紹介する本が出版された。また、さまざまなアーティストの素顔に迫るドキュメンタリー映画の製作総指揮も務めている。その中には『マリーナ・アブラモヴィッチ:アーティスト・イズ・プレゼント』『ボビー・フィッシャー・アゲインスト・ザ・ワールド』『ブラック・ホワイト+グレー:サム・ワグスタッフとロバート・メイプルソープの肖像』『バスキアのすべて』などがある。
US版ARTnewsは2017年秋、自らの財団の巨大アートセンターを南仏アルルに完成させたホフマンに話を聞いた。この場所を選んだ理由を彼女はこう語っている。「アルル自体は小さな町ですが、南部には地中海へとつながる広大な湿地帯があります。環境保護とアートのような文化は、あまり交わることがありません。なので、文化に関わる人にも環境に関わる人にも興味を持ってもらえるものにしたいと考えています」
ホフマンは、ニューヨークのオルタナティブスペース、スイス・インスティテュートの中心的な支援者で、従姉妹のマーヤ・オエリがスイス・バーゼルに設立したシャウラガー美術館(ヘルツォーク&ド・ムーロン設計)の理事でもある。