バリー・ラム(Barry Lam)
拠点:台湾・台北
職業:電子機器製造(クアンタ・コンピュータ)
収集分野:近代水墨画、宋代の陶磁器
1988年にバリー・ラムが台湾で設立したクアンタ・コンピュータは、アップルやデルといったブランドのノートパソコン生産を行っているOEMメーカーだ。ニューヨーク・タイムズ紙はかつて同社のことを、「世界で最も重要で、最も知名度の低いコンピュータメーカー」と評したことがある。
このように目立たない存在ではあるが、米フォーブス誌はラムの純資産を2022年現在で52億ドル(約7540億円)と推定しており、オークションハウス関係者の間でも有名だ。彼は中国の絵画や書などを2000点以上所有しており、中でも、20世紀の中国美術を代表する人気アーティスト、張大千の個人コレクターの第一人者と言われている。2010年には北京で開催されたチャイナガーディアンの春のオークションで、張の絵画「アーヘン湖」を1億80万元(約20億円)で落札。また、四川省内江市にある張の旧居に建設中の「張大千美術館」のスポンサーでもある。
クアンタの本社内にはアート&テクノロジーミュージアムがあり、ラムの個人コレクションもよく展示されている。また、台北の国立故宮博物院の諮問委員会の委員長を務めている彼は、2012年に宋代の汝窯の陶器を取得するため2600万ドル(約38億円)を投じた。汝窯陶器は非常に稀少で、完全な形で残っているものは100個にも満たないという。
2002年、ラムはニューヨーク・タイムズに「59歳になったら引退して、台湾に個人美術館を開く」とし、「台湾の経済的発展には目覚ましいものがあるが、文化的にはまだまだだ」と語っていた。2019年には70歳を迎えたが、今のところ引退する予定はない。世界の注目を台湾のアートシーンに向けさせたラムだが、彼が計画している個人美術館はまだ遠い未来の話であるようだ。