バリー・ラム(Barry Lam)

拠点:台湾・台北
職業:電子機器製造(クアンタ・コンピュータ)
収集分野:近代水墨画、宋代の陶磁器

バリー・ラムが1988年に台湾で設立したクアンタ・コンピュータは、アップルやデルなどのノートPC生産を行っているOEMメーカーだ。ニューヨーク・タイムズ紙はかつて同社のことを、「世界で最も重要で、最も知名度の低いコンピュータメーカー」と評したことがある。

このように目立たない存在ではあるが、米フォーブス誌はラムの純資産を2024年11月現在で130億ドル(約1兆9000億円)と推定(資産額は日々更新される)。中国の絵画や書などを2000点以上所有している彼はオークションハウス関係者の間でも有名で、中でも20世紀の中国美術を代表する人気アーティスト、張大千の個人コレクターの第一人者と言われている。2010年には北京で開催されたチャイナガーディアンの春のオークションで、張の絵画《愛痕湖(アーヘン湖)》を1億80万元(約21億円)で落札。また、四川省内江市にある張の旧居に建設された張大千美術館のスポンサーでもある。

クアンタの本社内にはアート&テクノロジーミュージアムがあり、ラムの個人コレクションもよく展示されている。台北の国立故宮博物院で諮問委員会の委員長を務めている彼は、2012年に宋代の汝窯の陶器を取得するため2600万ドル(約38億円)を投じた。汝窯陶器は非常に稀少で、完全な形で残っているものは100個に満たないという。

2002年、ラムはニューヨーク・タイムズ紙に「59歳になったら引退して、台湾に個人美術館を開く」とし、「台湾の経済的発展には目覚ましいものがあるが、文化的にはまだまだだ」と語っていた。2019年には70歳を迎えたが、今のところ引退する予定はない。世界の注目を台湾のアートシーンに向けさせたラムだが、彼が計画している個人美術館はまだ先の話であるようだ。

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