ジョージ・ルーカス、メロディ・ホブソン(George Lucas and Mellody Hobson)

拠点:アメリカ・カリフォルニア州、イリノイ州
職業:映画制作・プロデュース、フィランソロピスト(ルーカス美術館、ホブソン/ルーカス・ファミリー財団、ジョージ・ルーカス教育財団)
収集分野:19世紀・20世紀のアメリカおよびヨーロッパ絵画、アフリカ系アメリカ人のアート、現代アート、素描とイラストレーション、コミックアート、シネマティックファッション、物質文化、写真

映画監督のジョージ・ルーカスと、アリエル・インベストメンツで共同CEO兼社長を務めるメロディ・ホブソンは、2013年に結婚する前からそれぞれアート収集に情熱を注いできた。ホブソンは、カラ・ウォーカー、ゲイリー・シモンズ、ノーマン・ルイスなど、アフリカ系アメリカ人アーティストの作品を中心に収集。一方のルーカスは、ノーマン・ロックウェル、トーマス・ハート・ベントン、フランク・フラゼッタ、ジェイコブ・ローレンス、ウィンザー・マッケイ、ゴードン・パークス、マックスフィールド・パリッシュの作品やイラストレーション、デジタル作品、コミック、映画、アニメーションなどのコレクションを40年以上続けている。

結婚後は、2人がともに関心を抱く作品を収集するようになった。そのコレクションには、ジョージア・オキーフ、タマラ・ド・レンピッカ、ロバート・インディアナ、キャリー・メイ・ウィームス、フリーダ・カーロ、ジャン=ミシェル・バスキア、チャック・クローズなどが並ぶ。

US版ARTnewsのメールインタビューでホブソンは、コレクションを始めた頃に買っていたのはカラ・ウォーカーの作品だったと明かし、こう語った。「ジョージと私は、人生を変えるイマジネーションの力を心から信じています。一人前になって比較的早い時期からアフリカ系アメリカ人のアーティストの作品を集め始めましたが、才能あるアーティストがいるのを知ってワクワクしましたし、同時にその作品が過小評価されていると感じました。私たちの夢は、ルーカス美術館(ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブアート)を訪れた人たちが、そこにあるアート作品には自分自身や自分の物語が反映されていることに気づき、私たちを取り巻く世界を理解する新しい方法を見つけることです」

ルーカスはこう加える。私にとって「ナラティブアート」とは、人々が何を目指しているのか、何を本当に望んでいるのか、本当は何者なのか、あるいは何者でありたいのかについての洞察を与えてくれるものです。それは、コレクターとしての私を刺激するだけでなく、ルーカス美術館が人々の生活に与える影響について考えるときにも、私を刺激してくれるのです」

ルーカスは映画「スター・ウォーズ」シリーズの生みの親として知られ、その画期的な視覚効果を作り上げたインダストリアル・ライト&マジック社は業界に革命をもたらした。ホブソンは、シカゴに拠点を置く投資運用会社アリエル・インベストメンツのCEOとして、事業運営、ビジネス開発などに携わっているが、同社は2021年末時点で約183億ドル(約2兆5000億円)の運用資産を有している。彼女はまた、スターバックス・コーポレーションの取締役会長、JPモルガン・チェースの取締役でもある。

慈善活動も2人の重要な活動の1つだ。ホブソンは、シカゴの若者に質の高い学校外プログラムを提供するNPO、アフター・スクール・マターズの会長のほか、ロックフェラー財団とロサンゼルス・カウンティ美術館の理事を務めている。ルーカスは、幼稚園から高校までの教育を改革するため、1991年にジョージ・ルーカス教育財団を設立。また、フィルム・ファウンデーションとUSCスクール・オブ・シネマティック・アーツの理事を務めている。2010年、2人はビル・ゲイツとウォーレン・バフェットが共同設立した「ギビング・プレッジ(*1)」に署名した。


*1 保有する資産の過半を、生前または死後に慈善活動に寄付することを誓約する慈善活動。

2020年10月、ニュージャージー州のプリンストン大学は、学内の集合住宅の建て替えに多額の寄付をした卒業生、ホブソンの名前を同住宅に冠することを発表。それまでは、第28代アメリカ合衆国大統領ウッドロー・ウィルソンの名前が冠されていたが、彼の人種差別的な考え方や政策に異を唱える学生たちが、学内機関からその名を削除する運動を行っていた。ホブソンは当時の声明で、「私の名前が、未来の世代の学生たち、特に黒人や褐色人種、家族の中で初めて大学生になった人たちに、自分たちも大学の仲間だということを思い出させるものであってほしいと思います」と述べている。

2人はまた、ロサンゼルスにオープン予定のルーカス美術館の共同設立者(共同会長)でもある。MADアーキテクツのマー・ヤンソンが設計した同美術館には、ノーマン・ロックウェルやジュディ・F・バカをはじめとした多様なアーティストの作品を所蔵される。さらに期待感を与えているのが、メトロポリタン美術館で教育部門の責任者を務めたサンドラ・ジャクソン=デュモンを館長に採用したことだ。

ルーカスとホブソンは、ルーカス美術館の所蔵品にも多額の支援を行っている。ロバート・コレスコットの《George Washington Carver Crossing the Delaware: Page from an American History Textbook》(1975)は、サザビーズで1,530万ドル(約22億円)で落札され、コレスコットの最高落札額記録を更新した。また、アルテミシア・ジェンティレスキとその協力者によるものとされる《ガラテイアの勝利》(1650年頃)の取得にも貢献している。ルーカスはこう語る。「アートが語る物語は、それが私たち自身のものであれ、他の人々のものであれ、社会とその願望を理解するための鍵となる。ルーカス美術館が、来場者の世界に対する理解を深め、より公正で共感的な社会を築く一助となることを願っています」


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。
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