ニアルコス・ファミリー(Niarchos Family)
拠点:スイス・サンモリッツ
職業:海運業、金融業
収集分野:近現代アート、印象派、オールドマスター
ギリシャの海運王であった父、スタブロス・ニアルコスの財産と美術品を受け継いだフィリップ・S・ニアルコスは、世界で最も重要な印象派と現代アート作品の数々を所有しているとされる。たとえば、父のスタブロスが1989年に4780万ドル(約69億円)で購入した若き日のパブロ・ピカソの有名作品《Yo, Picasso》(1901)は、コレクションのスケールの大きさを物語るものだ。
ニューヨーク近代美術館の理事やロンドンのテートの国際評議員を務めているフィリップ自身も、1989年にクリスティーズでフィンセント・ファン・ゴッホの《耳に包帯を巻いた自画像》を7150万ドル(約104億円)で落札して注目された。同オークションでは、1982年に制作されたジャン=ミシェル・バスキアの自画像が330万ドル(約4億8000万円)で落札されたが、その匿名の落札者の正体はフィリップではないかという噂が流れた。さらに彼は、1994年にクリスティーズでアンディ・ウォーホルの《Shot Red Marilyn》を360万ドル(約5億2000万円)で落札。ちなみに、ウォーホルの1985年の作品《Philip's Skull》は、その名の通りフィリップの頭部をスキャンしたものだ。
1990年、ゴッホの没後100年を記念してアムステルダムのゴッホ美術館で行われた回顧展には、《耳に包帯を巻いた自画像》や《ペール・タンギーの肖像》(1887)を含むゴッホ作品5点を貸し出している。さらに、2007年にはウォーホルの《Green Burning Car I》(1963)を1700万ドル(約25億円)で入手したことが報じられた。
なお、フィリップの息子、スタブロス・ニアルコス3世は、トップ200コレクターズの1人、ダーシャ・ジューコワと2019年に結婚している。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。