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ローレン・パウエル・ジョブズ(Laurene Powell Jobs)

拠点:アメリカ・カリフォルニア州パロアルト
職業:テクノロジー、フィランソロピスト(エマーソン・コレクティブ)
収集分野:現代アート

ローレン・パウエル・ジョブズは、アップルの共同設立者、故スティーブ・ジョブズの妻で実業家でもある。2011年、がんとの長い闘いの末にジョブズが56歳で死去した後、パウエル・ジョブズは約140億ドル(約2兆円)とも言われる莫大な財産を相続。そのため、彼女は米国のハイテク業界で最も裕福な女性、地球上で6番目に裕福な女性と言われる。ジョブズと結婚する前は、ゴールドマン・サックスのトレーディング・ストラテジストとして働き、1990年代には自然食品会社テラヴェラを共同設立している。

現在パウエル・ジョブズは、エマーソン・コレクティブの創設者として、教育や移民問題など、社会変革に焦点を当てたプログラムを展開。この組織の名は、彼女のお気に入りの作家の1人、ラルフ・ウォルドー・エマーソンにちなんで付けられた。2018年、ワシントン・ポスト紙は、2004年に設立されたエマーソン・コレクティブを「実践的進歩主義のスーパーヒーローたち」と評している。その名に恥じない活動を続けるエマーソン・コレクティブでは、政治経済誌の老舗であるアトランティック(The Atlantic)の過半数株式を取得したほか、フランス人アーティストのJRが米国・メキシコ国境の両側で作品を制作するプロジェクトを支援。トランプ政権の強硬な移民政策を批判する声明を発表するとともに、タイム誌への寄稿でJRへの支持を表明した。

JRを支えるパウエル・ジョブズの行動は、移民問題に真正面から取り組むという強い意志からくるもののようだ。その挑戦の一環として、彼女はDACA(若年移民に対する国外強制退去の延期措置)関連プログラムへの支援を行い、「DACA/ドリーマーズ・アウトドア・アート・プロジェクト」という写真プロジェクトを実現。これは、DACAに関わる無数の人々のポートレートを集めたもので、インディアナ大学サウスベンド校で開催された。さらに2021年には、「十分な行政サービスを受けていない地域」に焦点を当てた気候変動対策に、35億ドル(約5100億円)を投じている。

パウエル・ジョブズはまた、アートとテクノロジーのコラボレーションにも注力している。2020年にはメガギャラリーのペースが関わったプロジェクト、スーパーブルーの立ち上げに貢献。スーパーブルーは翌年、デジタル関連アートを中心に紹介する実験的なアートセンターをマイアミにオープンさせた。同センターでは、エス・デブリンやチームラボなどの作品が展示されている

彼女は大のスポーツ好きでもあり、ワシントン・ウィザーズ(NBA)、ワシントン・キャピタルズ(NHL)、ワシントン・ミスティックス(WNBA)、そしてキャピタル・ワン・アリーナなどのオーナーであるモニュメンタル・スポーツ&エンタテインメント社の株式の約20%を2017年に取得した。

注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。

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