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エミリー&ミッチェル・ラレス(Emily and Mitchell Rales)

拠点:アメリカ・ニューヨーク、メリーランド州ポトマック
職業:ライフサイエンス、計測器・診断機器メーカー等の企業グループ
収集分野:近現代アート

ミッチェル・ラレスは兄のスティーブンとともに、1985年の米フォーブス誌の記事で「短パンの乗っ取り屋」と名付けられた。メディアを避けるようになったのは、それ以来のことだ。記事が出た頃から現代アートの収集を始めたラレスは、2012年のニューヨーク・タイムズ紙の取材でこう語った。「1940年代から50年代、デ・クーニングやポロックのように新たな潮流を作り出した革命的なアーティストは、当時のアート界でのけ者にされていた。兄と私も、年配のCEOばかりの世界で同じように扱われたというわけだ」

ラレスは、デ・クーニングやポロックをはじめ、ジャスパー・ジョーンズ、エルズワース・ケリー、ジョン・バルデッサリ、ロバート・ラウシェンバーグといった戦後美術の巨匠たち、そしてフェリックス・ゴンザレス=トレス、ケリー・ジェームズ・マーシャル、ローナ・シンプソン、ロニ・ホーン、ジャン=ミシェル・バスキアといった現代アーティストの作品を所有。コレクションの多くは、2006年に妻のエミリーと設立したメリーランド州ポトマックのグレンストーン美術館に展示されている。

この美術館は、かつてキツネ狩りのクラブが使用していた森の中の建物を利用しており、2018年に建築家トーマス・ファイファーの事務所によって大規模改築が行われた。ちなみに、エミリーはニューヨークのグラッドストーン・ギャラリーの元ディレクターで、現在はグレンストーンの館長を務めている。

2019年5月にニューヨークで開催されたサザビーズのオークションで、夫妻はリー・クラズナーの《The Eye is the First Circle》(1960)を、グレンストーン美術館の所蔵品にするために落札。落札額は1170万ドル(約17億円)で、それまでのクラズナーのオークション記録を更新した。同じ月、クリスティーズ・ニューヨークで行われた現代アートのセールで、ジェフ・クーンズの《ラビット》が9110万ドル(約132億円)で落札されると、匿名の買い手に関する噂が飛び交った。落札したのはラレス夫妻と取引のあるアートディーラー、ロバート・ムニューチンだが、ミッチェルはウォール・ストリート・ジャーナル紙に、この作品はグレンストーン美術館と関係ないと話している。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。

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