アートなマニラ観光ガイド。お洒落レストラン併設ギャラリーからアーティスト行きつけクラブ etc.

近年、アジアのなかでも急成長を遂げているフィリピンの首都マニラ。アート好きが集うギャラリーからローカルのクリエイティビティを体感できるレストラン、刺激たっぷりなナイトクラブまで、昼夜問わず楽しめる注目スポットを紹介。

ギャラリーやバー、セレクトショップなどが集まる複合施設「THE ALLEY AT KARRIVIN」に入居するギャラリー、1335MABINI。

日本から直行便で約5時間の距離にあるフィリピンの首都・マニラ。高層ビル群や大型商業施設と並んで遺跡や植民地時代の歴史的建造物が多く残り、英語が通じることから気軽に行ける観光地として人気だ。

そんなマニラには地元の新進気鋭のアーティストの作品を扱うギャラリーから、クリエイティブなレストラン、ナイトクラブまで、アート好きが楽しめる新しいアドレスも続々誕生している。マニラ出身のフォトグラファーであり、現在は東京とマニラで活動するカーラ・チャンが、オススメのスポットを紹介する。

LA FUERZA PLAZA COMPOUND:型破りなアーティストを紹介

マカティ市にあるラ・フエルサ・プラザには、複数のギャラリーが入居している。おすすめはVinyl on VinylFinale Art Fileだ。

Vinyl on Vinylはアングラカルチャー専門のギャラリーで、メインストリームから拒絶されがちな芸術形態を型破りな手法で扱うアーティストを多くフィーチャーしてきた。ジャンルもポップシュルレアリスムからアフターモダニズム、ポストインターネット、キネティックアート、ストリートアートまで幅広い。

一方のFinale Art Fileは、20年以上の歴史をもつギャラリー。2階の「Upstairs Gallery」、映像作品を扱う「Video Room」、そして大型の絵画や彫刻も展示できる広さを誇る「Tall Gallery」の3つのスペースにわかれ、現代の巨匠やキャリア絶頂期にあるアーティストの作品を展示している。その多くが、「ジャンル分け不可能」な作品を制作する作家だ。

住所: 2241 Chino Roces Ave, Makati, Metro Manila

12/10:地元のアーティストの大型作品を観ながら腹ごしらえ

マニラ市から一歩離れたロックウェルの中心地に新しく移転した12/10。ガブ・バストスとセア・デ・リヴェラが手掛ける斬新な居酒屋には、ゲル・ジャムラングの絵画やラルフ・メンドーサの写真作品など、フィリピン人アーティストの大型作品が飾られた空間が広がる。

ランチタイムはサンドイッチやプレート料理、コーヒー、デザートおまかせメニューを提供し、ディナータイムはロウフードから肉料理までのセットメニューや、旬の食材を使った風味豊かな小皿料理を豊富なドリンクと一緒に嗜むことができる。

住所: 8 Rockwell Dr, Makati, Metro Manila

BOMBVINOS BODEGA:クリエイターによるイベントも人気のワインバー

仲間同士で会話を楽しみながらくつろげる、心地よい雰囲気が人気のBombvinos。2階建てのロフトスペースには厳選されたナチュラルワインが並び、それをシェフが「フィリピン・ビストロノミー」と名付けた個性的なローカルフードと一緒に楽しめる。

ワインバーとしても人気の店だが、DJイベントや陶芸セッション、フラワーデザインワークショップといった地元クリエイターによるイベントも開催している。

住所: Unit 3, The Zone Sports Center, 7224 Malugay Street, Brgy, Makati, Metro Manila

APOTHEKA:多彩なナイトイベントを開催

マカティ市のポブラシオンにあるApothekaは、多様なDJやアーティストが集まるイベントスペース。2023年のオープン以来、さまざまなコミュニティが企画するナイトイベントが魅力のひとつ。

ユニークで実験的な音楽ジャンルを好む人には、Terminal DogmaUnearthによるライブショーがおすすめ。ダンスミュージック好きは、Transit Recordsによるテクノ、エレクトロ、ブレイクビーツのクラブナイトや、アップリフティングなトラック、ディスコ、ワールドミュージックのJasphonica、メロディックテクノのDISKOTEKA、ポップハウスミュージックのCHURCH SUSPIRIAが注目だ。ほかにも、アフロやバイレを引き継ぐBodies、ドラァグパフォーマンスのThe Mighty Real、テックハウスやアシッドのTiempo by Contrastなど多様なジャンルの音楽が楽しめる。

住所: G/F, White Rabbit Blg, 5672 Dona Carmen St, Cor General Luna, Makati

THE ALLEY AT KARRIVIN:ギャラリーもバーも集まる複合施設

THE ALLEY AT KARRIVINに入居するギャラリー、The Drawing Room。

マカティ市のチノ・ロシズ・アベニューに位置するTHE ALLEY AT KARRIVINは、アート展示やバー、レストラン、ブティックが集まるカジュアルな複合施設。ArtInformal1335MABINIDrawing Roomといったコンテンポラリーアートギャラリーも入居している。

レストランエリアも充実しており、「アジアのベストレストラン50」に名を連ねるToyo EateryMetizのモダンなフィリピン料理(予約必須)や、フィリピンのローカルフレーバーを生かした個性派ベーカリーPanaderya Toyo(テイクアウト)、季節の地元の食材を味わえるInatôなど、美食を堪能できる場所でもある。おしゃれなインテリア用品を扱うコンセプトストアのAphro Livingも必見だ。

住所: 2316 Chino Roces Ave, Makati, 1231 Metro Manila

TARZEER:写真&映像好きはマストチェック

写真や映像作品が好きならぜひTarzeerへ。写真と映像が専門のこのギャラリーは、展示スペースとしてのみならず、クリエイティブを表現するためのハブとなっている。商業エージェンシーも手掛けるクリエイター集団が運営しており、彼らのキュレーションが地元アーティストやブランドに独自のストーリーテリングをもたらしている。

アーティストには大判プリントや額装をするためのサポートも提供され、その作品が存分に引き立つような環境が整っている。アートを通じてコミュニティの一体感を育むとともに、文化的な交流の場としても機能する空間だ。

住所: 2288 Chino Roces Ave, Makati, 1232 Metro Manila

ITO:芦沢啓治が手がけたローカルレストラン

フィリピン各地の農場から仕入れた地元の食材を活かした、実験的なアプローチのメニューを特徴とするIto。おすすめは、ランバノグやタプエイ、ビグナイワインなどのローカルならではのカスタムドリンクや小皿料理が提供されるセットメニューの「フライト」だ。タウトッグベリーや黒米、ジャックフルーツ、アーニバル、キャラメルバナナなど、地元のユニークな食材を味わうことができる。

デザインを手掛けたのは、建築家の芦沢啓治。24平方メートルのコンパクトなスペースは、地域産材のアカシアの木材、銅、コンクリートを使用しており、昼夜問わず楽しめる空間を演出になっている。タガログ語で「This」を意味する「Ito(イト)」という名前は、今という瞬間を大切にし、体験を重視するこのレストランのコンセプトを反映している。

住所: 107 Aguirre, Legazpi Village, Makati, 1229 Kalakhang Maynila

WHYNOT:リモートワークにもぴったりのカルチャーハブ

「カルチャーハブ」としてメディアライブラリー、展示スペースなどを有するWHYNOTでは、Artinformal Galleryのオーナーが所有する彫刻や美術品のプライベートコレクションも展示されている。広々としたオープンスペースでは演劇からDJセットまで幅広いイベントも開催され、日中はコワーキングスペースとしても開放。写真を撮影をするアーティストから大きなテーブルを囲んでプロジェクトについて話し合うクリエイターたち、そして非対称な棚やテーブルに置かれた多様な本を手にする学生まで、みなが思い思いに過ごしている。

CELERA:フィリピンの複雑で豊かな食の歴史を楽しむなら

シェフのニッコ・サントスとクイニー・ヴィラーが創業したレストラン。フィリピンのノスタルジックなルーツにひとひねり加えた料理を提供している。多彩なメニューに通底するのは、さまざまな文化が入り交ざるフィリピンの食文化の歴史とシェフ自身の記憶だ。

CELERAが入居しているのは、ビジネスと商業の中心地であるマカティ地区にある複合施設、Comuna。緑豊かな一角に、ローカルアーティストの作品を扱うギャラリーやセレクトショップ、飲食店などが入り賑わいを見せている。

Photos and Text: Kara Chung Edit: Asuka Kawanabe

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