ナディア&ラジーブ・サムダニ(Nadia and Rajeeb Samdani)

拠点:バングラデシュ・ダッカ
職業:食品加工業、金融業などのコングロマリット(ゴールデン・ハーベスト・グループ、ガルフ・インターナショナル・ファイナンス・リミテッド)、フィランソロピスト(サムダニ芸術財団、ダッカ・アート・サミット)。
収集分野:アンティーク銀器、デザイン分野の物品、近現代アート、南アジア美術

バングラデシュの実業家、ラジーブ・サムダニと妻のナディアは、同国の近現代アーティストや、インド・パキスタンの美術品などの膨大なコレクションを所有。国際的な舞台で南アジア地域のアーティストの知名度を高めることを自らの使命としている。ラジーブは、イギリスのテート美術館ネットワークの南アジアコレクション委員会の創設メンバーであり、後にナディアも委員会に加わった。

サムダニ夫妻は、海外のアート作品をバングラデシュに紹介することにも力を注いでいる(バングラデシュには現代アート専門の美術館がないことをラジーブは嘆いている)。そのフィランソロピー活動の一例が、2年に一度、世界中からキュレーターやアーティスト、アート関係者を集めるダッカ・アート・サミットだ。このイベントでは、地域のアーティストに光を当てるとともに、リンダ・ベングリスやシムリン・ギルといった海外アーティストの新作が紹介され、委託制作も行われている。

2014年に夫妻は、アニッシュ・カプーア、バーティ・ケル、ジティシュ・カラット、ラヴィンダー・レディ、チトラ・ガネーシュ、スボード・グプタといったアーティストの作品を収集していることを評価され、米フォーブス誌のインド・アート・アワードでヤング・コレクター・オブ・ザ・イヤー部門にノミネートされた。

両親もコレクターだったナディアは、若い頃からアートを収集していたという。ラグジュアリーライフスタイルメディアのロブ・レポートによると、彼女は22歳のときにバングラデシュの先駆的な前衛芸術家であるSMスルタンの絵を購入。その後、インドのモダニズム作家やピカソ、ダリといった20世紀前半の美術品の収集を続け、やがて現代アートをコレクションするようになった。

彼女はロブ・レポートに、「いつから現代アートに目を向けるようになったのか、はっきりとは言えませんが、今生きているアーティストが表現していることを、より深く理解するための自然な反応でした」と語っている。

サムダニ夫妻はさらに、バングラデシュ東部の都市シレットにシュリハッタ・サムダニ・アート・センターと彫刻公園を開設する。広さ40万平方メートルものこのスペースでは、ハルーン・ミルザ、スーパーフレックス、ラックス・メディア・コレクティブによるプロジェクトがすでに予定されている。

「ダッカ・アート・サミットと同じく、バングラデシュに新しいインバウンド資源、アートを中心とした旅行の目的地を作りたいという長年の夢から生まれたのがシュリハッタです」と、ナディアは説明する。「ラジーブと私は今、サムダニ芸術財団のための常設の展示施設や世界レベルのアートセンターを建設するという夢を、私たち家族の出身地で実現しようとしているのです」

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