シェリ&ハワード・シュルツ(Sheri and Howard Schults)
拠点:アメリカ・シアトル
職業:スターバックスコーポレーション元会長(コーヒーショップチェーン)、フィランソロピスト
収集分野:現代アート
スターバックスコーヒーを世界的な企業に育てたハワード・シュルツ。彼がどんな作品を収集しているのか詳細はほとんど公にされていないが、コレクターとして大きな影響力を持つ彼は、文化の発信地として、そして有力なアート市場として、シアトルの地位を高めていった。有名アートディーラーのジェフリー・ダイチによると、シュルツはマイクロソフト共同創業者の故ポール・アレンとともに、「シアトルはアートフェアを開催するのにふさわしい場所だ」と言っていたという(生前のアレンもトップ200コレクターズに何度か選ばれている)。
住居にもアートにも出費を惜しまないシュルツは、ハワイに所有する約985平方メートルの邸宅のため、2015年に2500万ドル(約36億円)の美術品を購入。2017年にはスターバックスのCEOを退任して執行会長となり、以後は社会貢献への取り組みとスターバックス・リザーブに関連するビジネスに専念するとした。
シュルツはまた、2020年の米大統領選に向け、民主党の候補者として名乗りを上げた。しかし2019年6月、3度にわたる腰の手術の後、陣営はリハビリに専念するため休みを取ることを発表。そして9月、「中道派の独立候補」を目指していたシュルツは、最終的に出馬を断念した(2020年9月の候補指名ではジョー・バイデンを支持)。
この政治活動の最中に、アートコレクションに対するシュルツの情熱が垣間見られている。政治メディアのポリティコが取材したスターバックスの元従業員が、興味深いエピソードを明かしたのだ。当時スターバックスでは、創業時からの自由放任主義的なカルチャーと、世界的企業になってからの新しい社風との「溝を埋める」ことが必要だった。元社員は、スターバックスでは数多くのアーティストの卵が働いていたことから、「スターバックスのアーティストたち」という展覧会を後援してはどうかと提案したという。
「でも、私がハワードに会ってその話をしたとき、彼は15分間ずっと自分のコレクションについて語っていました」