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蔡翁美慧&蔡明興(マギー&リチャード・ツァイ/Maggie and Richard Tsai)

拠点:台湾・台北
職業:保険業・証券業(富邦フィナンシャルホールディングス)
収集分野:現代アート

米フォーブス誌の台湾長者番付で何度かトップに立ったことのある蔡明忠(ダニエル・ツァイ)と蔡明興(リチャード・ツァイ)の蔡兄弟は、富邦(フーボン)フィナンシャルホールディングスの共同経営者だ。

台北有数のコレクターであるリチャードと妻の美慧(マギー)は、過去20年間で約600点の作品を収集。マギーは世界的アートコレクターのデータベースを有するラリーズ・リストのインタビューで、16歳頃からコレクションを始めたと答えている。「10代の頃は、お小遣いを貯めて版画を買ったものです。自分がどんな作品が好きかはっきりしていました。心に響くものは直感的に分かるのです」

夫とともに頻繁にギャラリーめぐりをするマギーが、本格的にコレクションを始めた頃に気に入っていたのは、常玉(サンユウ)や趙無極(ザオ・ウーキー)だったという。「彼らの作品を買おうと思ったのは、単純にとても好きだったからです。投資のことはまったく考えていませんでした。コレクションしたものから作品を売ったことはありません」と、彼女はラリーズ・リストに語った。

1997年以来、マギーは富邦美術基金のCEOとして、台湾各地で展覧会、講演会、リサーチなどを主催したり資金を提供したりしている。講演者には、中国映画監督の賈樟柯(ジャ・ジャンクー)、現代美術家の徐冰(シュー・ビン)、日本人建築家の隈研吾、台北市文化庁長官の倪忠華(ニー・チュンファ)、コメディアンでテレビ司会者の黄子佼(ミッキー・ホアン)、イラストレーターで作家の幾米(ジミー・リャオ)など、600人以上の著名人が名を連ねる。

同財団はまた、巨大な彫刻をパブリックアートとして設置することにも取り組んできた。その代表的な活動は「Very Fun Park」と呼ばれ、10年以上にわたって台北東部の公共スペースで現代アートのインスタレーションやパフォーマンスを行っている。ちなみに、2019年1月に英フィナンシャル・タイムズ紙は、台北に新たな私設美術館の計画があると報じたが、ツァイはこの件を肯定も否定もしていない。

2018年、ニューヨーク大学スターン経営大学院は、1981年に同校で経営学修士号を取得したリチャードの支援を受けて、テクノロジー、ビジネス、イノベーションのための富邦センターを設立。フォーブス誌によると、2020年時点でのリチャードの純資産は30億ドル(約4350億円)と推定されている。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。

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