スティーブ・ウィン(Steve Wynn)

拠点:アメリカ・ラスヴェガス
職業:カジノ
収集分野:近現代アート

かつてスティーブ・ウィンは、「お金は妥協しないことを表現する手段である」と発言したことがある。この言葉は、ウィンの名を冠したラスベガスの巨大カジノと同様、ウィンのアートコレクションにも当てはまる。

2005年、ウィンの所有する19世紀と20世紀美術のコレクションの評価額は、3億ドルから4億ドル(約435億から580億円)にのぼるとされた。その中にはヨハネス・フェルメールの《ヴァージナルの前に座る若い女性》(1670年頃)も含まれていたが、当時、個人所有のフェルメール作品は2点しかなかった。その後ウィンは、フェルメールを含む一流作品を売却。ヘッジファンドで巨万の富を築いたスティーブン・A・コーエンは、ヴィンセント・ファン・ゴッホの《小麦畑に座る麦わら帽の若い農婦》(1890)とポール・ゴーギャンの《Bathers》(1902)を手に入れるため、約1億2000万ドル(174億円)をウィンに支払ったとされた。そして現在、ウィンのアートコレクションは10億ドル(1450億円)相当になると見られている。

ウィンは性的不品行疑惑のために2018年にウィン・リゾーツのCEOを退任したが、本人は疑惑を否定している。同年末、彼はシエラ・ファインアートを立ち上げ、マティス、ピカソ、ウォーホルといった有名アーティストの作品を扱うオンラインアートギャラリーを開設。ウィンの弁護士マイケル・コスニツキーはアートネットニュースに対し、「彼は活動を続けられるようなビジネスを始める」と説明した

ウィンは世界中を回って重要な美術品を探し出し、その豊富な経験と知識を活かして販売するつもりだという。実際、ウィンの新会社は、2018年にクリスティーズ・ニューヨークで8470万ドル(約123億円)を付けたモネの睡蓮シリーズの作品《Nymphéas en fleur》(1914-17年頃)の落札者だと伝えられた。当時この作品は、オークションにおけるモネの最高落札額を樹立している。

2022年にもウィンが物議を醸す出来事があった。マカオでのビジネス利益を守るため、トランプ政権に外交上の便宜を求めたとして米国務省が彼を訴えたのだ。彼はこの疑惑も否定した。

高額な美術品のコレクションに加え、ウィンは超高額の不動産物件を複数所有し、それを頻繁に売買している。2015年には、トップ200コレクターズに数年間ランクインしていたアパレルブランドGuess(ゲス)の共同創業者、モーリス・マルシアーノが所有するビバリーヒルズの家を4790万ドル(約69億円)で購入。その2年後、ロサンゼルス郊外のベル・エアにある邸宅を1655万ドル(約24億円)で売却し、2020年6月にはラスベガスの約1255平方メートルの別荘を2500万ドル(約36億円)で売りに出している。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。