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アート・バーゼル・マイアミ・ビーチがいよいよ開催! 売り上げ見通しは明るく、作品の多様化が進む

アート・バーゼル・マイアミ・ビーチがいよいよ今週末、12月6日から8日まで開催される(4・5日はプレビュー)。今年の特徴や、出品作品にはどのような傾向があるのかを紹介しよう。

2023年に行われたアートバーゼルマイアミビーチのパーティーの様子。Photo: Getty Images for Meta

アメリカ最大級のアートフェアアート・バーゼル・マイアミ・ビーチが12月6日から8日までマイアミビーチ・コンベンションセンターで開催される(4・5日はプレビュー)。今年は38の国と地域から286ギャラリーが参加し、そのうち新規出展は34ギャラリー。これは2008年以来最大の増加数となる。

今年の特徴は、昨年ディレクターに就任したブリジット・フィンが完全に手掛ける初のフェアとなるということ。彼女はギャラリストやキュレトリアル・プロジェクトに携わった経験を持っており、フェアに新風を吹き込むことが期待されている。現在発表されているものでは、会場レイアウトを全面的に見直し、新進気鋭のギャラリーや作品に焦点を当てたNovaとPositionsセクションの間に、大型作品を集めたMeridiansを組み込んだ。

売り上げに対する業界人の見通しも明るい。アメリカの大統領選が終わり、11月中旬に開催されたクリスティーズ、サザビーズの2大オークションがまずまずの成功を収めた。これを受けて、ニューヨークのアートアドバイザー、アンワリ・ムサはアートネットの取材に対して、良い意味でのドミノ効果が起こり、フェアは良い「流れ」のうちに進むだろうと予測している。

ロサンゼルス在住のアドバイザー、ビクトリア・バーンズも同様に楽観的だ。アートネットの電話インタビューで、「私は完全に楽観的です。夏の低迷期を経験し、今は、選挙で誰が勝ったからというわけではなく、終わったからという理由で安心感があります。私の顧客はフェアを楽しみにしています」と話し、「ただ、(低迷を経験して)市場がより『厳選的』になったと聞いたことがあるでしょう。人々は購入する前にもう少し時間をかけるようになり、時には購入を思いとどまることもあります」と付け加えた。

カテラン旋風再び?テキスタイル作品の評価が高まる

先月行われたサザビーズ・ニューヨークのオークションで624万ドル(約9億7000万円)で落札され、話題をさらったマウリツィオ・カテランの《Comedian》(2019)が発表された場が、ここアート・バーゼル・マイアミ・ビーチだ。今年、再びカテラン旋風が巻き起こるかもしれない。ミラノ、ロンドン、香港などに拠点を持つマッシモ・デ・カルロは、金メッキと鏡面仕上げが施された星条旗にいくつもの銃弾の跡が残るカテランの新作《Under》(2024)を同フェアに出品する。カテランが「金と銃はアメリカン・ドリームだ」と語ったこの作品の価格は50万ユーロから100万ユーロ(7900万円~1億6000万円)。またマリアン・グッドマンは、カテランが内部のボタンやベルに至るまで精巧に創り上げた小型エレベーター《Untitled (elevator) 》(2001)を出品。150万ドル(2億2400万円)で販売する。

アートフェアでは美術館での展覧会を間近に控えた、あるいは終えたばかりのアーティストをフィーチャーすることが多々ある。今年も例外ではなく、特に有色人種のアーティストが目立つ傾向にあった。リーマン・モーピンはペレス美術館マイアミで初の美術館での個展を開催するカリダ・ロウレスの新作絵画と、フロリダ国際大学フロスト美術館で展覧会を開催する南アフリカのビリー・ザンゲワのシルクコラージュの2本立ての展覧会を開催している。

ティニー・ペットウェイ《8 Point Star》(1970年代頃)

今年のもうひとつの特徴は、テキスタイルを使ったアートの多さだ。これは、近年伝統工芸がハイアートの世界に進出していることを顕著に表している。絵画や彫刻に比べて価格が低い傾向にあるというのも魅力だ。ニューヨークのニセル・ボーシェンは、バーゼル・マイアミに初出展となる2人のキルト作家、ティニー・ペットウェイとクララ・ワトソンの作品を特集。ペットウェイの《8 Point Star》(1970年代頃)は4万ドル(約600万円)で販売する。また、ニューヨークのティナ・キム・ギャラリーでは、韓国人アーティスト、イ・シンジャとカン・ソギョンによる織物の作品が展示されている。

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