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LGBTQの歴史がテーマの「クィア博物館」がポーランドに開館。「私たちはもう恐れる必要はない」

12月6日、ポーランドの首都ワルシャワで同国のLGBTQの歴史をテーマにした「クィア博物館」がオープンした。この背景には、今も実現しない同性婚の合法化や、止まらないLGBTQの人々への差別や暴力がある。

2024年12月6日、オープンしたクィア博物館に集まる人たち。Photo: AFP via Getty images

12月6日、ポーランドの首都ワルシャワで、国内初となるLGBTQの歴史をテーマにした「クィア博物館」がオープンした。ワルシャワの繁華街であるMarszalkowska通り、ケバブ店と古着屋に挟まれた場所にある同館は、LGBTQの支援を行うポーランドの非営利人権団体Lambdaによって設立された。

同館では、手紙、写真や活動家の資料など、16世紀に遡るポーランドのLGBTQの人々の歴史を伝える約150点が展示されている。同館について、Lambdaのディレクター、クリストフ・クリシンスキは「ポスト社会主義のヨーロッパにおいて初めての施設」と表現。同組織会長であるミウォシュ・プシェピオルコフスキは6日、開館についての声明で、「ポーランドは、EUで最もクィアの人々が法的抑圧に晒されている国。私たちがその国でクィア博物館をオープンするのです」と宣言した。

博物館のオープニングセレモニーには、1980年代のワルシャワで活動した、ポーランドのLGBTQ活動家界の先駆者的存在である作家のアンドジェイ・セレロヴィッチとリシャルト・キシェルが参加。80年代当時、ポーランドの治安当局はワルシャワ内の同性愛者の男性の情報を調べ、行動を管理していた。今回、そんな中でキシェルが制作・配布したセーフセックスのルールを書いたリーフレットと、セレロヴィッチとパートナーの写真が寄贈された。

クリシンスキは、ポーランドのLGBTQ関連の資料の多くが未公開のまま破棄されており、これらの資料を保存することがいかに困難であったかを説明。そして同館の開館は「前進」であると主張した。だが、同国のクィアの活動家たちは、公の場でLGBTQ関連の資料を展示することに対して依然として法的な障害があることを強調している。

The Straits Timesの報道によると、ポーランドの与党は同性婚の合法化を公約に掲げていた。しかし、その政権が発足してからほぼ1年が経過した今も、カトリック教徒が大半を占めるこの国では、同性カップルは結婚することもパートナーシップを結ぶこともできない。先週も、国連の専門家がLGBTQの人々を差別や暴力から守るために法律を迅速に改正するようポーランド政府に強く促したばかりだ。

活動家たちは、街の中心部に位置する博物館が同性愛嫌悪による攻撃の対象になると考えており、それに立ち向かおうとしている。クリシンスキは、「私たちはもう恐れる必要はありません。もし誰かが私たちの博物館にペンキを吹きかけたら、私がそのペンキを落とします」と話した。(翻訳:編集部)

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