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スザンヌ・マクフェイデン(Suzanne McFayden)

拠点:アメリカ・テキサス州オースティン
職業:投資家、著述家
収集分野:現代アート

「黒人、女性、移民、離婚、そして作家であり母親であること──こうした私の全てがコレクションに反映されています」。スザンヌ・マクフェイデンは、アートコレクターである自分について、カルチャー誌 Cultured Mag のインタビューにこう答えている。

ジャマイカで生まれ、現在テキサスを拠点に活動するマクフェイデンのブルータリズム様式の自宅には、グレン・ライゴン、パーヴィス・ヤング、インカ・ショニバレ、ワンゲシ・ムトゥ、デボラ・ロバーツといったアーティストの作品が飾られている。自らのコレクションについて彼女は非常にオープンだが、トップコレクターの中にはそうでない人物も少なくない。初めて購入した本格的なアート作品、ムトゥのコラージュ作品《I Have Peg Leg Nightmares》(2003)について、マクフェイデンは2021年のUS版ARTnewsの取材に「これが今の私の旅の始まりでした」と話している。

しかし、彼女を惹きつけたのはアーティストの知名度ではない。直感的な感情に基づいてアートを選ぶというマクフェイデンは、「魂を揺さぶるような作品にしか興味がないんです」とArtsyに説明している。「自分ではそれを『胎動初感』と言っていますが、胃のあたりにサーっと血液が流れるような感覚です。もっと近づきたくなるような、もっと知りたい、もっと問いかけたいというような衝動を感じて作品に誘い込まれます。滅多には起きませんが、私が最も待ち望んでいる感覚です」

マクフェイデンはニューヨークのハーレム・スタジオ美術館とオースティンのブラントン美術館の理事でもあり、後者では2021年に理事長に就任したほか、タイタス・カファーのNXTHVNや、ローレン・ホールジーのコミュニティセンター「サマエブリサング(Summaeverythang)」など、アーティストが設立した非営利団体への支援も惜しまない。また、MoMA PS1元理事のアグネス・ガンドのコレクションと慈善活動に影響を受けたという彼女は、飢餓に苦しむ人々に食料を供給するため、国内外の人道支援のスポンサーにもなっている。

さらに、現代アートの代表的な黒人作家をコレクションし、著名美術館で主要な役職を務めることで、マクフェイデンは有色人種の活躍の場を広げ、道を切り開くことに貢献。その彼女は今の状況について、「黒人アーティストたちが抽象性を取り戻し、よりラディカルで、より政治的で、より柔軟な作品を作ろうとしているのが分かります」と語っている。

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