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訃報:伝説の写真家、エリオット・アーウィットが95歳で死去。戦後のフォトジャーナリズムを牽引

写真集団マグナム・フォトのメンバーであり、第2次大戦後のフォトジャーナリズムを牽引した写真家、エリオット・アーウィットが11月29日、95歳で亡くなった。

11月29日に死去が発表されたエリオット・アーウィット。Photo: Miguel Medina/AFP Via Getty Images

11月29日、マグナム・フォトが彼の死を発表した。発表によると、エリオット・アーウィットは家族に見守られながら自宅で息を引き取ったという。死因は明らかにされていない。

壮麗なモノクロームで撮影されたアーウィットの作品は、戦後のドキュメンタリー写真を決定づけた。彼は出版物の仕事と自身の創作活動の両方で、よく知られた被写体を、新鮮で、神秘的で、魅惑的に見せることに成功した人物だ。45年間で25冊以上の写真集を出版し、多くの国際写真賞を受賞した。

アーウィットは1928年、ロシア人の両親のもとパリで生まれ、1939年にアメリカに渡った。その後写真を始め、大学では映画制作とともに写真を学んだ。そして大学を卒業した翌年の1951年にアメリカ陸軍に徴兵され、フランスに駐在した。

アーウィットは以前よりロバート・キャパやロイ・ストライカーら戦後を代表する写真家と交流を持っており、除隊後の1953年、キャパの誘いでマグナム・フォトに加わった。彼はフォトジャーナリズムを売りにした著名雑誌「LOOK」や「LIFE」と仕事をするようになり、数十年間、キューバやアルゼンチン、ラスベガス、イギリスのバーミンガムなど世界中を飛び回った。

中国のF11写真美術館で開催されたエリオット・アーウィット展より、マリリン・モンローの写真。Photo: Edward Wong/South China Morning Post Via Getty Images

彼の作品は、ホテルの一室で夜更かしをするマリリン・モンローや、暗殺されたジョン・F・ケネディを悼むジャッキー・ケネディ、車のサイドミラーでキスをするカップル、緊迫した会話を交わすリチャード・ニクソンとニキータ・フルシチョフなどが知られる。これらの写真は書籍やポスター、ポストカードとして出版され、世界中の美術館で展示されている。

彼はまた、エッフェル塔の前で傘をさして飛び跳ねる男や、ニューヨークの階段に座る女性と彼女のひざに乗るブルドッグが重なって、まるで女性の顔がブルドッグになってしまったかのような作品など、ユーモアある構図の写真も撮影している。

中国のF11写真美術館で開催されたエリオット・アーウィット展の展示風景。Photo: Edward Wong/South China Morning Post Via Getty Images

アーウィットは、芸術的な指針はアンリ・カルティエ=ブレッソンだと話していた。ブレッソンは、その場で発見した厳格な構図を強調した、モダニズムの写真を撮るフランスの写真家だ。アーウィットもまた、偶然に左右されることなく、即興でユニークな構図を発見していった。

犬は、アーウィットの写真に常に登場するお気に入りのモチーフだ。飛び跳ねたり、車のトランクでくつろいだり、浜辺で打ち寄せる波に思いを馳せたり、飼い主を上目遣いで見つめたり。彼は犬に特化した写真集を何冊か出版したが、その中には彼の愛犬が被写体となった作品も収録されている。

2022年、写真ブログ「PetaPixel」のインタビューで、なぜそんなに犬に興味があるのかという問いに、アーウィットはこう答えている。「彼らは写真のプリントを要求しないからさ」(翻訳:編集部)

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