「アートの名探偵」が国立公文書館から盗まれた歴史的文書の回収に成功! 同館は盗難に気付かず
これまでゴッホやダリ作品を救出してきたオランダの「アート名探偵」が、オランダ国立公文書館から盗まれた25点の歴史的文書の回収に成功した。その中にはユネスコの「世界の記憶」に登録された貴重なものもあった。

「アート探偵」を自称するオランダの私立探偵アーサー・ブランドが、2015年にオランダ国立公文書館から盗まれた25点の歴史的文書を回収した。アートニュースペーパーが7月10日に報じた。
ブランドは、2009年にシェリンガ美術館から盗まれたサルバドール・ダリ《青春》とタマラ・ド・レンピッカ《音楽家》など、これまで数々の美術品の回収に成功してきた。2023年には、2020年にフローニンゲン美術館から盗まれたフィンセント・ファン・ゴッホ《春のヌエネンの牧師館の庭》(1884)の返還にも貢献し、作品がIKEAの買い物バッグに入っていたという話題から、さらに注目される存在になっていた。
ブランドによると、ある人物が入院中の親戚の屋根裏部屋を片付けていたところ、文書が詰まった段ボール箱を発見。文書が重要なものである可能性があるとみて、大学の元歴史学教授に見せたところ、ブランドに連絡するよう勧められたという。箱の中身を確認したブランドは、これが盗品であれば正当な持ち主に返還するという条件で箱を引き取った。彼は、「彼らが送ってくれた写真を見た時点で、これがただものではないことがわかりました」と当時を振り返った。
段ボール箱には、1445年に騎士が敵軍に書いた4メートルにおよぶ書簡や、1592年から1604年までの政府の極秘会議の詳細を記した書物などが非常に良い状態で収められていた。中でも、オランダ東インド会社が1602年に初めて開催した会議や、1700年に同社がムガル帝国の皇帝アウラングゼーブを訪問した際の報告書、17世紀のオランダ海軍提督ミヒール・デ・ロイテルの航海日誌など、オランダ東インド会社に関する文書はユネスコの「世界の記憶」に登録されているものだった。
ブランドは、文書はオランダ国立公文書館所蔵のものとつきとめ、オランダ警察と国立公文書館に連絡した。だが、なんと公文書館は盗まれた事実を把握していなかった。
ブランドと警察は、文書は2015年に1年間在籍していた公文書館のアーカイブ職員によって盗まれたと考えている。この職員は、箱が見つかった家の持ち主から文書を担保に金を借りており、その後死亡している。
国立公文書館はNLタイムズの取材に対して、一部の文書が紛失していることは知っていたが、盗まれたことは認識していなかったと正式に認めた。
その上で同館の広報担当者は、「盗難の事実を把握していなかったことには様々な理由が考えられます。例えば、文書が誤って違う場所に返却されることもあります。私たちは全長145キロメートルを超える公文書、1500万枚以上の写真、30万枚の地図や図面を管理しています。これほど膨大な所蔵品全ての完全な目録を作成することは非常に難しいのです。しかし、セキュリティの改善方法は常に検討しています」とコメントした。(翻訳:編集部)
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