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オランダで盗品の歴史的絵画が有名探偵に届く。1500万円を超えるお宝を送った犯人の思惑は?

オランダ・北ホラント州の町、メーデンブリックの庁舎から盗まれた6点の歴史的絵画が、ある日突然、アムステルダムの私立探偵宛に配達された。

ラドバウド王の肖像画。Photo: Courtesy Gemeente Medemblik

オランダのメディアが報じるところによると、絵画を受け取ったのは美術を専門とする私立探偵のアーサー・ブランド。ブランドは、盗難に遭ったゴッホピカソの作品を取り戻すことに貢献した実績で知られる。

先月も、2020年3月に盗まれたゴッホの《春のヌエネンの牧師館の庭》の回収に成功したが、そのとき絵が入っていたのがIKEAの青いバッグだったことで大きな話題になった。

配送業者がアムステルダムにあるブランド宅のベルを鳴らしたのは金曜日の夜、テレビを見ていたときだったという。届いたのは6点の歴史的絵画が梱包された荷物で、合わせて10万ユーロ(約1580万円)以上の価値があると見られる。

ブランドは、この信じられないようなお宝をよく調べたのち警察に通報。なお、配達員は窃盗事件とは無関係とされている。

ブランドはアートニュースペーパー紙の取材にこう答えている。

「先月、ゴッホの絵が犯人側から引き渡され、世界中でニュースになったことが引き金になったのだと思います。ゴッホ作品が回収できたのは、犯人側がそれを持っていてもどうにもならなかったから。売り払うこともできなければ、刑を軽くしてもらうことも不可能でした」

ブラントはまた、こう説明する。

「おそらく(メーデンブリックの窃盗犯は)怖くなったのでしょう。あるいは、すでに警察から追跡されていた可能性もあります。燃やしてしまうという選択肢もありますが、それでは捕まった場合に刑期が延びてしまう。それで、私の家に送りつけることを思いついたのかもしれません」

回収された絵画の中で特に貴重なのは、中世初期にフリースラント(現在のオランダやドイツなど北海沿岸の地方)の支配者であったラドバウド王の肖像画とされる。他の5点は、オランダ王室のオラニエ公ウィレム、オラニエ公マウリッツ、ヤン・ファン・ナッサウ伯爵、ウィルヘルミナ女王の肖像画、そして聖書の一場面を描いたものだ。

メーデンブリックのイェローン・ブローダース副町長はプレスリリースで次のように述べている。「どれほど価値のあるものだったかは、失って初めて分かるものです。それは、今回盗まれた絵画にも当てはまります」(翻訳:石井佳子)

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