ウド・ブラントホルスト(Udo Brandhorst)

拠点:ドイツ・ミュンヘン
職業:保険業
収集分野:戦後美術・現代アート

ウド・ブランドホルストが死別した妻、アネッテ・ブラントホルストは、ドイツの大企業ヘンケル社の創業者一族出身で、多大な遺産を受け継いでいた。ヘンケル社がアメリカで販売している製品には、洗剤(All、Snuggle、Purex)、トイレタリー(Dial、Right Guard、Sexy Hair)、接着剤(Loctite)などがある。

アネッテの資産とウドが保険会社の役員として得た収入をもとにコレクションした近現代アート作品は、約1000点にのぼる。中でも、アンディ・ウォーホルの作品は100点を超え、《Camouflage Last Supper》(迷彩柄の最後の晩餐)や、マリリン・モンロー、エリザベス・テイラー、ジャクリーン・ケネディ・オナシスの肖像画など、さまざまなシリーズを所有している。

1970年代から20世紀前半の前衛作品を収集し始めたブラントホルスト夫妻は、次第に現代アートへと対象を移していった。特に2人が好んだ作家は、アメリカの画家・彫刻家、サイ・トゥオンブリーだ。夫妻が購入したトゥオンブリーの重要作品の中には、「レパント・サイクル」シリーズの大型絵画12枚があり、全体を展示するために専用のスペースを確保する必要があった。

1999年にアネットが亡くなったのち、ウドはドイツ・バイエルン州に数多くの作品を寄贈。バイエルン州は、そのコレクションを収蔵・展示するため、ミュンヘンにブラントホルスト美術館を建設した。10年後の2009年に開館した同館が所蔵する作家は、シグマー・ポルケ、ゲルハルト・リヒター、ヨーゼフ・ボイス、ブルース・ナウマン、マイク・ケリー、キャディ・ノーランド、ジェフ・クーンズ、カタリーナ・フリッチ、ロバート・ゴーバー、ダミアン・ハーストなど豪華な顔ぶれだ。2019年のインタビューで同館のアヒム・ホーフデルファー館長は、ブランドホルストが寄贈した700点の作品から始まった同館の所蔵品は、現在約1200点にまで拡大していると語っている。