反戦の象徴、サダコ像がシアトルで盗まれる。足首から上を切断、金属目的の犯行か
広島に投下された原爆に被ばくし、白血病で亡くなった少女、佐々木禎子をモデルに制作された像《Sadako and the Thousand Paper Cranes》が、シアトルで盗まれた。犯人は足首から上を切断して銅像を持ち去ったとみられ、地元の捜査当局は金属回収業者に捜査の協力を要請している。
第二次世界大戦終盤に広島に投下された原爆の被ばくによる白血病で1955年に亡くなった少女、佐々木禎子をモデルに制作され、ワシントン州シアトルに立てられた銅像《Sadako and the Thousand Paper Cranes》(以下、サダコ像)が盗まれたことが、7月12日、地元メディアの報道によって明らかになった。この像は、反戦を象徴する存在として地元の人々に受け入れられていた。
犯人は、サダコ像を足の部分で切断して持ち去ったとみられる。シアトル市警は声明で、地元の金属回収業者に捜査協力を呼びかけたと発表しており、シアトル市民は、政治的な動機ではなく金属目的に盗んだと推測している。
シアトルのユニバーシティ・ディストリクトにあるピース・パークに1995年に建てられたサダコ像は、高さおよそ1.5メートル。クエーカー教徒の活動家で大学教授のフロイド・シュモーが考案し、ダリル・スミスによって制作された。彼女が入院した際に折った千羽鶴にちなみ、手に折り鶴を持っている。古くから日本人街があるシアトルでは「反戦を象徴」する存在として親しまれており、これまで像の足下には、願いが込められた折り鶴が頻繁に置かれてきた。シュモーのひ孫であるエイブリー・ロケットはニューヨーク・タイムズの取材に対して次のように応えている。
「この盗難事件は、まるで私たち家族に対する攻撃のように思えました。高祖父が残した功績や、彼がサダコ像をつくろうとした理由を理解しているシュモー家の人は、この地域にそう多く居ません」
サダコ像は2003年にも腕が切断されたが、寄付金によって修復されている。とはいえ、像の大部分が失われてしまった今、この像を修復することができるか否かは明らかになっていない。
溶接工でもあるロケットは、もしサダコ像が発見されなかった場合、記念碑の代わりとなるものを用意すると語っている。(翻訳:編集部)
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